研究課題
挑戦的研究(萌芽)
がんの転移・浸潤・薬剤耐性などの悪性化には腫瘍微小環境が重要な役割を果たす。申請者は、グルタミンなどの非必須アミノ酸には、mTOR非依存的なゴルジ体を介した新規栄養センサーが存在する可能性を見出している。本研究は、これまで知られていないmTOR非依存的、且つがん細胞特異的な新規オルガネラ栄養センサーの探索を目的とし、がん特異的な新規栄養センサーを標的とした画期的な治療法の開発に繋げる挑戦的な研究としての意義を有する。本研究は、先天性アミノ酸代謝異常症などの小児難治性代謝疾患の新規メカニズム解明や治療法へと応用が広がる可能性も秘めている。
本研究は、がん細胞の生存や幹細胞性維持に重要な、がん細胞特異的な新規栄養センサーの探索と制御を目的とし以下の項目を検討した。オルガネラ形態を指標としたgRNAスクリーニング系の樹立と標的遺伝子の同定: 本研究項目では、(1)CRISPRを用いた gRNAライブラリーをHeLa細胞、及びPanc1細胞にレンチウイルス導入し、正常なゴルジ体構造とゴルジ体崩壊した細胞をイメージングサイトメトリーを用いて分取する系を樹立した。既に申請者らは、イメージングサイトメトリーを用いて、微小管形成阻害剤(ノコダゾール)処理した細胞をゴルジ体崩壊細胞の教師データとして機械学習を行い、95%以上の確率でゴルジ体崩壊細胞を採取することに成功した。さらに、補完実験として、(2)超解像顕微鏡下で扱える細胞採取装置で、ゴルジ体形態を指標に超解像顕微鏡下で細胞選択的にマニュアル採取することが出来た。今後、採取した細胞からgRNAの配列情報をPCRで増幅し、さらに次世代シークエンサーで検出することで、ゴルジ体形態を指標にして栄養応答性を維持する標的因子を同定いたいと考えてる。さらに、ゴルジ体アンカータンパク質群からアミノ酸栄養特異的にゴルジ体を崩壊・再集合させるタンパク質を同定しており、この因子に関して分子生物学的な実験で詳細なメカニズムを解明する。 本研究成果は、新規がん治療法の開発やアミノ酸代謝異常疾患の病態解明や治療法への応用が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で、(1)CRISPRを用いた gRNAライブラリーをHeLa細胞、及びPanc1細胞にレンチウイルス導入し、正常なゴルジ体構造とゴルジ体崩壊した細胞をイメージングサイトメトリーを用いて分取する系を樹立し、イメージングサイトメトリーを用いて、ゴルジ体崩壊細胞の教師データとして機械学習を行い、95%以上の確率でゴルジ体崩壊細胞を採取することに成功した。さらに、(2)超解像顕微鏡下で扱える細胞採取装置で、ゴルジ体形態を指標に超解像顕微鏡下で細胞選択的にマニュアル採取することが出来たことから、今後、採取した細胞からgRNAの配列情報をPCRで増幅し、さらに次世代シークエンサーで検出することで、ゴルジ体形態を指標にして栄養応答性を維持する標的因子を同定し詳細なメカニズムの解明につながることが期待できる。また、上述のように既に、栄養応答性を維持する標的因子を一部見出していることからこのタンパク質に関して解析を行うことが期待できるなど、当初の研究計画どおりおおむね順調に進展している
今後の研究の推進の方策として、上述の(1)栄養応答性を維持する標的因子の詳細なメカニズムの解明する研究は継続しつつ、さらに、(2)がん特異的なオルガネラ栄養センサーの分子メカニズムの解明: 本研究項目では、研究項目1で同定した様々な標的因子群を、網羅的な遺伝子発現解析やリン酸化プロテオーム解析と統合し、標的因子の絞り込みを行う。既に申請者は、網羅的な遺伝子発現解析からグルタミン依存的に、ゴルジ体のアンカリングタンパク質GM130を介して、ゴルジ体が再構成される可能性を見出していることから、その詳細な分子機構を解明する。また、がん細胞特異的なリボソームー小胞体ーゴルジ体に渡るグルタミンオミクス変動も見出しており、グルタミン特異的なオルガネラ間の代謝連関機構を明らかにする。オルガネラ間の形態変化を超解像ライブイメージングと多階層のオミクス統合解析を融合することにより、従来にない進行がん特異的な新たな栄養感知オルガネラ間代謝連関を解明する。本研究よりがん悪性化を促進する新規栄養センサーの同定とその制御が可能となり、腫瘍微小環境で悪性化するがん細胞を攻略する画期的ながん治療法の開発に繋がることが考えられる。
すべて 2023 その他
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