研究課題/領域番号 |
23K18256
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
相澤 秀紀 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (80391837)
|
研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
|
キーワード | ドーパミン / ストレス / 勇敢 / マウス / モノアミン / 勇気 |
研究開始時の研究の概要 |
勇気は不安や恐怖などを克服した上で危機を積極的に解決する重要な生存戦略だが、このような意思決定を駆動する神経機構は未開拓の領域である。脳内ドーパミンは動機付けや行動強化に関連すると考えられているが、その一方で過度の合目的的な行動強化がリスクの高い勇気ある行動を抑制している可能性が高い。我々は「勇気の背景にはドーパミン放出の低下がある」という仮説を検証するため、不安や恐怖を克服する「勇気」をマウスの「闘争状態」への移行へと還元し、この問題に取り組む。具体的には、尾懸垂や攻撃者の門前で示す勇敢な行動を駆動するドーパミン代謝の役割を独自のドーパミン測定技術および光操作法により明らかにする。
|
研究実績の概要 |
勇気は、不安や恐怖など負の情動を克服した上で危機的状況を積極的に解決する体制と考えられる。しかし、このような意思決定を駆動する勇気の神経機構は、その重要性にも関わらず未開拓の領域である。この問題に対し申請者は、尾懸垂状態のマウスが「絶望状態」から「闘争状態」に切り替わる直前に、腹側線条体のドーパミン放出が低下することを掴んでおり、「勇気の背景にはドーパミン放出の低下がある」という仮説に至っている。本研究の目的は、この仮説を検証するため、不安や恐怖を克服する「勇気」を尾懸垂下マウスの「闘争状態」への移行へ還元し、ドーパミンの役割を複数の神経系で解析することで、上記仮説の普遍性を検証することである。今年度は、行動中のマウスの各脳領域におけるドーパミン放出を光測定する方法の最適化を行った。具体的には、1)ドーパミンの光測定を担うバイオセンサーをAAV-Silk法の導入により最適化し、2)光カニュラの埋め込み手術および光測定データの解析ワークフローの開発を行った。3)また、尾懸垂下における行動データを収集し、数値解析を行った。これらの成果により、尾懸垂下での不安や恐怖を乗り越えて闘争行動へ至る際の腹側線条体ドーパミンの減少を光測定により確認した。この研究結果は、従来法であるボルタンメトリによる先行研究結果を再現するものである。同様の研究結果が新たな光測定により得られたことは、光測定の簡便性と高い物質特異性を利用して本研究が推進されることを示している。このようにして次年度より任意の神経経路におけるドーパミン放出の測定が効率的に行うことが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の主な達成目標は、1)細胞外ドーパミン測定を行うバイオセンサーの導入法の効率化、2)行動中のマウスにおける脳内ドーパミン放出のデータワークフローの確立であった。まず、1)については、従来法によるとAAVによる遺伝子導入部位と光ファイバー埋め込み場所が必ずしも一致しないケースが散見されており、問題解決の必要があった。これらについて、AAV-Silk法を新たに導入して問題解決にあたり、良好な結果を得ており、順調に研究は進展した。また、光測定による取得データの解析ワークフローの開発が課題であったが、この点についてもMatlabを用いた解析コードを独自に開発することで、問題解決を図った。また、2023年度には、次年度に本格使用予定のTH-IRES-Cre系統のコロニー形成を進めていたが、一部系統維持にトラブルがあり、やや遅延している。この問題は2023年度末に解消しており、順調にマウス交配が進めば、今後の研究計画に問題はないと考えられた。これらの事実より、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の2つの課題に取り組む予定である。1)脳の複数領域におけるドーパミン放出の同時計測を行うことにより、腹側線条体でみられたドーパミン放出動態との類似点および相違点について検討する。2)上記で得られる細胞外ドーパミン放出の動態と行動にみられる意思決定の因果関係について光遺伝学を用いて検証する。1)については、複数領域への光ファイバーの埋め込みに際して、新たな測定装置の開発および相互干渉を回避した光ファイバー設置場所を最適化する必要がある。多点光測定の装置については、すでにプロトタイプ開発を終えており、この装置を応用することで研究を推進する。2)については、光刺激による任意の脳領域でドーパミン放出を活性化もしくは不活性化させる必要があり、ドーパミン神経細胞特異的な遺伝子操作を可能にするTH-IRES-Cre系統を用いて研究を推進する予定である。
|