研究課題/領域番号 |
23K18266
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分52:内科学一般およびその関連分野
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
吉良 潤一 国際医療福祉大学, 医学研究科, 教授 (40183305)
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研究分担者 |
山口 浩雄 令和健康科学大学, リハビリテーション学部, 特任教授 (00701830)
竹内 英之 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (30362213)
今村 友裕 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 講師 (30725122)
Maimaitijiang Guzailiayi 国際医療福祉大学, トランスレーショナルニューロサイエンスリサーチセンター, 特任助教 (60887107)
松瀬 大 九州大学, 医学研究院, 講師 (70596395)
真崎 勝久 九州大学, 大学病院, 講師 (90612903)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 多系統萎縮症 / 脱髄 / 多発性硬化症 / シヌクレイン / ミクログリア / オリゴマー / 伝搬 / コネキシン / 脱髄疾患 / 神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
多系統萎縮症小脳型(MSA-C)は変性疾患だが、オリゴデンドログリアにαシヌクレイン(α-syn)が蓄積し脱髄を生じる。脱髄疾患の多発性硬化症(MS)でもα-synが蓄積する。私たちは、高凝集性のヒトA53T変異α-synをオリゴデンドログリアに成熟期に発現させると急速進行型MSA-C、髄鞘形成前から発現させると多彩な症候を示す進行型MSを呈するマウスを樹立した。精製ミクログリアの単一細胞RNAシークエンスにより、炎症性サイトカインを豊富に発現するシヌクレイノパチー関連ミクログリア(SAM)を同定した。本研究では、SAM発生機構を解明してSAMマーカーを確立し、SAM標的治療を開発する。
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研究実績の概要 |
多系統萎縮症小脳型(MSA-C)では、高凝集性のヒトA53T変異α-synuclein (syn)をTet-off systemにより任意の時期にオリゴデンドログリアに発現できる遺伝子改変マウスを樹立し、世界初の急速進行型MSA-Cモデルの作成に成功した。髄鞘化後に8週齢よりヒトα-synを発現させると、22週齢で進行性の小脳失調を発症し30週齢で死に至った。脳幹・小脳白質・脊髄でリン酸化α-syn凝集体の出現部位に顕著なグリア炎症と脱髄、軸索脱落を呈した。マイクロアレイでは自然免疫・炎症系分子の発現が顕著に亢進した。脳脊髄から単離したCD11b+ microgliaの単一細胞RNAシークエンスにより、既知の神経保護的なミクログリアに加えて、新たに炎症性サイトカインやα-synの貪食に関わる分子を豊富に発現する特異なクラスターを同定した。このミクログリアはα-syn凝集体に密着し発症に伴い増加するため、synucleinopathy-associated microglia (SAM)と命名した。Colony stimulating factor 1 receptorの阻害薬の予防的投与は、神経保護的ミクログリアを減少させる一方、SAMを増加させ臨床的にも病理学的にも悪化させた。Proximity ligation assayにより、MSA-Cマウスではα-syn oligomerは10週齢で脳幹オリゴデンドログリアに出現してグリア間で伝搬し、12週齢で脳幹軸索へ伝搬し、その後に脳幹・小脳ニューロンの細胞体に伝搬することを発見した。 私たちはMSA-Cモデルに中枢神経高移行性のCx43ヘミチャネル阻害薬(INI-0602)を投与すると、oligomerの伝搬は促進される一方、リン酸化α-syn凝集体の形成が抑制されて、グリア炎症が改善し進行が有意に遅くなることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急速進行性の多系統萎縮症小脳型の世界初のマウスモデルの作成に成功した。このマウスで、病原性のあるミクログリア群の同定に成功した。さらに、α-synuclein oligomerが早い時期からオリゴデンドログリアからアストログリアやニューロンへ伝搬することを証明できた。Cx43阻害薬の投与により、α-synuclein oligomerの伝搬が広がっても、リン酸化α-synuclein凝集体の生成が抑えられると、グリア炎症が軽減し、臨床的にも病理学的にも軽減することを明らかにできた。これは、Cx43ヘミチャネルから放出される炎症分子は小胞体ストレスを誘導し異常蛋白の凝集を促進するので、これが阻止されると考えている。さらに、MSAでも多発性硬化症(MS)でも剖検標本でSAMと同様な分子を高発現するミクログリアを脱髄病巣に認めた。Colony stimulating factor 1 receptorの阻害薬の予防的投与は、神経保護的ミクログリアを減少させる一方、SAMを増加させ臨床的にも病理学的にも悪化させたことから、SAMは病原性と考えられることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
私たちは、最近、組織切片上でα-syn oligomerを検出するPLA法と各細胞マーカーを組み合わせた二重染色法を開発した。MSA-Cマウスで経時的にα-syn oligomerとリン酸化α-syn凝集体を二重染色法で細胞群ごとに定量解析し、SAMの出現、小胞体ストレス、脱髄、軸索障害との関連を解析する。MSA-Cマウスではヒトα-synの発現を停止する時期が23週齢だと完全に回復するが、27週齢だと障害が残存し回復しないので、停止する時期による動態の差を検討する。さらに、Cx43ヘミチャネル阻害薬や小胞体ストレス防止薬等でin vivoでoligomerと凝集体の形成と阻止の病態を解析する。さらに上記SAMはキナーゼ類を高発現するので、SAMで増加するキナーゼを解析し、各種キナーゼ阻害薬の治療効果をMSA-Cマウスで検討する。またα-syn oligomer伝搬の細胞レベルでの解析とα-syn凝集体が病原性ミクログリアを誘導する機序を解析する。MSA-Cマウス培養オリゴデンドログリアにヒトα-synを発現させたときの変化をプロテオミクス解析する。Cx43を恒常的に発現するastrogliaや炎症性になるとCx43を高発現するmicrogliaとの共培養系でα-syn oligomerや凝集体の生成を促進または抑制する分子を同定し、Cx43阻害薬で分泌が抑制されるかを検討する。小胞体ストレス防止薬などがα-syn凝集体形成を抑制するか検討する。またα-syn oligomerや凝集体を培養ミクログリアに作用させたときに、SAM様の炎症性ミクログリアが生成されるか、またこれらの病原性ミクログリアの炎症性活性化が各種キナーゼ阻害薬で抑えられるか検討する。培養アストログリアにα-syn凝集体を作用させることで炎症性活性化が起こるかを組織免疫染色やmRNAの発現で解析する。
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