研究課題/領域番号 |
23K18283
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
乃村 俊史 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50399911)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | mRNA / SERPINB7 / 長島型掌蹠角化症 / RNA品質管理機構 / フィラグリン |
研究開始時の研究の概要 |
ナンセンス変異などにより早期終止コドン(PTC)がmRNAに生じると、mRNAの品質管理機構により変異mRNAの大部分は分解されるが、例外的に最後のエキソンにPTCが存在する場合はNMDを回避することが知られている。しかし、我々はFLGとSERPINB7の最後のエキソンにPTCを持つ変異mRNAは、この定説に反して大部分が分解されることを見出した。本研究では最後のエキソンにPTCを持つmRNAの分解機構の解明を目指す。本研究では皮膚疾患以外の遺伝性疾患にも適用できる基本原理の解明が期待できるため、その波及効果は大きく、mRNA品質管理機構を利用した治療応用の可能性も期待できるはずである。
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研究実績の概要 |
SERPINB7変異により長島型掌蹠角化症が発症する機序を解明するために、既報告のすべての変異体を作成し、実験を行った。結果、変異体はほぼすべてSERPINB7の細胞外分泌不全をきたすことが明らかになった。興味深いことに、この変異体の中には小胞体への輸送に重要なアミノ酸配列の欠失も含まれていた。また、SERPINB7へのN型糖鎖付加に重要なアミノ酸のミスセンス変異体も含まれていたことから、小胞体でのN型糖鎖付加不全により細胞外分泌に必要な糖鎖修飾が行われなくなることが病態に重要であると予想された。また、ナンセンス変異やフレームシフト変異から産生される変異体も細胞外分泌不全を呈することを明らかにした。細胞外に分泌されたSERPINB7がどのようなプロテアーゼの制御に関わっているのかは未だ不明であるが、変異によりSERPINB7の細胞外分泌不全が生じた結果、プロテアーゼの制御がうまくいかなくなることで、長島型掌蹠角化症が発症する可能性が考えられた。長島型掌蹠角化症に対する根本的な治療法は未だ存在しないが、これらの結果からはSERPINB7がターゲットとするプロテアーゼの制御が行われれば、本症の根本的な治療が可能である可能性が強く示唆された。 一方、FLG変異については、3'側の変異に着目し、解析を行ったところ、3'UTRの長さ依存的ではなく、配列に依存的な分解が認められることを見出した。今後、さらに詳細を詰めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SERPINB7変異(長島型掌蹠角化症)についての実験は順調に進んでいる。一方で、FLG変異(尋常性魚鱗癬)についてはまだ十分な結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
SERPINB7のターゲットプロテアーゼの同定を行う予定である。また、変異SERPINB7 mRNAが減少する機構について詰めていく予定である。FLGについてもmRNA分解の機序の一部はつかめているが、すべての変異に対して共通のメカニズムかどうか、慎重に確認していく予定である。
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