研究課題/領域番号 |
23K18284
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高山 直也 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (10584229)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 動脈硬化モデル / ヒトiPS細胞 / マクロファージ / 血管細胞 / レトロトランスポゾン / エピゲノム / ウェルナー症候群 / 動脈硬化 / オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
動脈硬化は、心筋梗塞などの致死的な虚血性疾患の原因となる加齢性疾患であり、病態解明と新規薬剤開発が望まれる。申請者らはこれまでに、ヒトiPS細胞からのマクロファージ、血管細胞を用いた2次元共培養により、同一の遺伝的バックグラウンドの細胞を用いた動脈硬化モデルの構築に成功した。本提案では、①独自で解析した細胞不老化技術を組み合わせた各種モデル細胞の安定供給、②これらの細胞から構成される新規動脈硬化スフェア作製による3次元培養系確立、③その系を用いて、エピゲノム異常と動脈硬化の関連の解明、を目指す。
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研究実績の概要 |
動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞などの致死的な虚血性疾患の原因となる加齢性疾患であり、病態解明と新規薬剤開発が望まれる。申請者らはこれまでに、ヒトiPS細胞からのマクロファージ、血管細胞を用いた2次元共培養により、同一の遺伝的バックグラウンドの細胞を用いた動脈硬化モデルの構築に成功した。しかし、ヒトiPS細胞から直接目的細胞まで誘導する現在の手法では、様々な分化過程で生じる不安定要素、意図しない系譜の細胞産生などが生じ、効率面が不十分であり、長期間がかかることが課題である。そのため、大量の細胞が必要となる複数のオミックス解析や大規模な薬剤スクリーニングに対応するための培養系の改良が求められている。以上の背景から、令和5年度は以下を明らかにした。 ①不老化マクロファージ・血管細胞、間葉系幹細胞株の樹立:doxycyclineにより不老化因子が誘導されて増殖するシステムを用いて、複数のマクロファージ、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞株の樹立、特性解析を終了した(特願2022-212691)。 ②マクロファージ/血管細胞での動脈硬化モデルの構築とエピゲノム異常の解析:早老症の一つであるWerner症候群iPS細胞由来のマクロファージ、血管細胞を用いた実験から、Werner症候群iPS細胞由来のマクロファージでは、レトロトランスポゾンの異常再活性化が生じ、細胞内核酸検出系を介して、インターフェロンシグナルの異常亢進が生じていた。ヒストンH3K9トリメチル(H3K9me3)に対するChIPシークエンスの結果、レトロトランスポゾン再活性化領域で、有意なH3K9me3レベルの低下を確認し、異常活性化の機序の一端が解明された(Paul and Takayama, et al., Nature Communications2024, in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本提案では、病態解明、創薬スクリーニングの基盤となる同一の遺伝的バックグラウンドの細胞を用いた動脈硬化モデルの構築を目指し、ヒトiPS細胞由来マクロファージ、血管構成細胞との共培養法の開発を推進している。現在までに、ソースとなる各種細胞を独自の不老化技術により大量確保する技術を確立し、特許申請を行なった(髙山直也, Sudip Kumar Paul,中村壮, 「細胞分化度の調節方法」 特願2022-212691)。さらに、それらの培養から、動脈硬化が頻発するウェルナー症候群由来のマクロファージ細胞では、H3K9me3の低下によりレトロトランスポゾン再活性化と異常な炎症反応惹起が誘導されることを明らかにし、Nature Communication誌にアクセプトされた。以上から、本提案で掲げた3つの課題のうち、2つの課題がほぼ終了しており、研究は予定通り遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では2次元の共培養系による動脈硬化再現モデルが確立でき、詳細な解析を行なっている。一方近年、細胞間の相互作用をより生理的な3次元培養で再現するオルガノイドが注目されている。既存のオルガノイド技術の課題は、オルガノイド間の大きさなどの不均一性や、大量の薬剤スクリーニングに対応できるほどの大量のオルガノイドの準備が困難であることが挙げられる。一方、我々の技術では、各細胞を均一、大量、安定的に準備可能である。R6年度は、攪拌培養系導入、各種ゲル素材などの検証を行い、3次元培養系を確立し、現在確立している2次元培養系との優位性などの比較を実施する。
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