研究課題/領域番号 |
23K18286
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
住田 隼一 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30609706)
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研究分担者 |
武富 芳隆 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (40365804)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 線維化 / 皮膚 / 脂質 / 全身性強皮症 / 酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
臓器の線維化は、慢性的な組織傷害や炎症により生じる。全身性強皮症やケロイド/肥厚性瘢痕といった難治性皮膚線維性疾患に対して現在使用されている薬剤は、免疫をターゲットとするものがほとんどであり、線維化を直接ターゲットとする抗線維化薬の新規開発が望まれている。そこで、本研究課題では、脂質やその代謝酵素に注目し、遺伝子改変動物などを用いて皮膚線維化病態における新たな機序を明らかとし、新規抗線維化薬創出のための分子基盤構築を目指す。
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研究実績の概要 |
線維化は、慢性的な組織傷害や自己免疫的機序による炎症により生じ、時に硬化に伴う機能不全を呈する。線維化を伴う皮膚疾患には全身性強皮症(Systemic Sclerosis; SSc)、ケロイド/肥厚性瘢痕などがあるが、これら線維化を伴う皮膚疾患の疾患特異的あるいは共通する線維化機序については未だに不明な点が多い。これら線維性皮膚疾患においては、既存の免疫をターゲットとした治療では抵抗性を示すことが多く、治療効果は十分とはいえない。そのため、線維化の新しい機序の解明や線維化を直接ターゲットとする抗線維化薬の新規開発が望まれている。本研究では、皮膚線維化病態における脂質代謝関連酵素の新たな機能を明らかにし、線維化をターゲットとする新規抗線維化薬創出のための分子基盤の構築を目的としている。これまでの実験において、SSc患者検体を用いた脂質代謝関連酵素の網羅的発現解析を行ったところ、線維化した皮膚病変部でmRNA発現が上昇・低下する脂質代謝関連酵素を複数ピックアップできている。さらに、その分子が具体的にどの細胞で発現しているかを検討するために、免疫組織化学染色や細胞単離による発現解析などを実施している。その結果、線維化に伴い皮膚線維芽細胞で発現が上昇する、あるいは表皮角化細胞で発現が低下する脂質代謝関連酵素などを複数同定できており、さらには各種培養細胞を用いた実験にて、その発現制御機序についても新知見が得られている。生体内での機能を解析するために、遺伝子改変マウスを作製しており、現在皮膚硬化モデルなどを適用して、その表現型を解析中である。本研究により、皮膚線維化病態における脂質の新たな機能を明らかにできれば、線維化を直接ターゲットとする新規抗線維化薬創出に繋がると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに臨床検体を多数取得しており、皮膚組織検体を用いた網羅的発現解析を実施できている。具体的には、線維性疾患のプロトタイプであり膠原病の中で最も予後不良の疾患として知られている全身性強皮症の皮膚において発現変動する注目すべき脂質代謝関連遺伝子を複数選定できている。また、培養細胞を用いた実験でも興味深い結果が得られており、in vivoでの機能解析に必要な遺伝子改変動物もすでに入手あるいは研究分担者の協力を得てすでに作製できている。これらは、本研究計画に沿ったものであり、その進捗を含めて順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、注目している各脂質代謝酵素が線維化病態において果たす役割について、遺伝子改変動物を用いた機能解析を中心に進めていく。また、皮膚線維化病態における各酵素の基質と代謝産物についても質量分析などによって同定したい。さらには、これらの結果をもとに、線維化の増悪因子であれば酵素の阻害剤、抑制因子であれば基質や代謝産物の投与など、実験動物と皮膚線維化モデルを用いて臨床応用へ向けた予備知見についても得たいと考えている。本研究により得られた結果が、線維化病態における脂質経路を応用した新規創薬展開へつながることを期待しており、皮膚のみならず他臓器の線維性疾患にも応用されることを期待している。
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