研究課題/領域番号 |
23K18292
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分53:器官システム内科学およびその関連分野
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
児島 将康 久留米大学, 付置研究所, 教授 (20202062)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | GPCR / オーファンGPCR / ペプチドホルモン / 幹細胞 / 消化管幹細胞 / LGR5 / 幹細胞マーカー / リガンド探索 |
研究開始時の研究の概要 |
LGR5は発生や分化に関連していることが示唆されているが、リガンドが未同定であるために、リガンドが受容体に結合してシグナル伝達を行ったときに幹細胞にどのような変化があるのかは不明である。 LGR5は、LGR4およびLGR6とアミノ酸配列のホモロジーが高く、受容体ファミリーを形成しており、これらは全て内因性リガンドが不明なオーファンGPCRである。 LGR5の内因性リガンドが発見されれば、LGR4とLGR6の内因性リガンドについても大きな情報が得られ、結合するペプチドホルモンの正体が明らかになり、発生・再生の研究分野へ大きな貢献ができると期待される。
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研究実績の概要 |
ヒトとショウジョウバエのLGRファミリーは相同性が高く、そのリガンドも相同性が高い。例えばヒトLGR1~3とそのリガンド(LH/CG, FSH, TSH)との関係は、ショウジョウバエのdLGR1とGPA2/GPB5の関係に等しく、LGR7~8とそのリガンドのリラキシンとの関係は、dLGR3とインスリン様ペプチド8との関係に等しい。ヒトのLGR4~6だけは内因性リガンドが不明であるが、LGR5(LGR4とGR6も含めて)に対応するショウジョウバエのdLGR2のリガンドは、バーシコン(bursicon)というヘテロダイマー(bursとpbursのヘテロダイマー)のペプチドホルモンである。バーシコンはショウジョウバエ表皮の硬化や色素沈着を起こすホルモンである。このようにLGR5にアミノ酸配列が似たショウジョウバエdLGR2の内因性リガンドがbursとpbursのヘテロダイマーのバーシコンであることから、LGR5の内因性リガンドも、burs/pbursに類似したペプチドのヘテロダイマーである可能性が考えられた。そこでバーシコンにアミノ酸配列のホモロジーの高いヒトのペプチドを、タンパク質データベースから選び出し、2種類の組み合わせで培養細胞にヘテロダイマーとして発現させる。そして発現させたヘテロダイマーのペプチドをLGR5に作用させるアッセイ系を使って、目的とするLGR5の内因性リガンドを見つけ出す計画を着想した。 今年度は、bursおよびpbursに類似する候補ペプチドについて、研究開始時点に見出していた14種類のペプチドと共に、新たに複数個の候補ペプチドを見出した。これらはbursおよびpbursの立体構造の類似性したものを、AlphaFoldを使って検索した。合計20数種のこれらの候補ペプチドをすべて培養細胞に発現させるためのプラスミドベクターに組み込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作製した合計20数種の候補ペプチドを発現するプラスミドベクターは、2つずつ組み合わせて、ヘテロダイマーのペプチドとして合成するために293T細胞に発現させた。細胞に発現ベクターをトランスフェクションし、数日培養したあとに培養液を回収した。培養液は遠心濃縮チューブを用いて、約50分の1のボリュームに濃縮した。 一方で、LGR5およびLGR4, 6 のオーファンGPCRをCHO細胞に一過性に発現させた細胞を準備して、96ウェルに播種し、そこに培養液を濃縮したヘテロダイマーサンプルを添加した。数分から数時間の反応ののち、反応液を回収してcAMP濃度をαスクリーン系のシステムで測定した。 その結果、いくつかの組み合わせのサンプルに、cAMP濃度の上昇が認められた。これらの活性が見られた組み合わせのものについては、再度サンプルを調整し、活性の再現性を確認することを試みた。 しかし検討を進めていくと、培養液に含まれる色素の影響が、培養液の濃縮の過程で残ったままであり、これがアッセイ系に干渉することがわかった。現在、色素を含まない培養液等を用いて候補ペプチドのヘテロダイマーサンプルを調整して、アッセイを繰り返している。 以上のように、今年度、候補ペプチドホルモンのピックアップを完了し、アッセイは順調に進んでいるため、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在のアッセイ系においては、培養液の色素などの影響が大きく、測定値の不安定の原因となっている。その対策として、色素を含まない培養液を使用することや、αスクリーン系以外のcAMPアッセイシステム(例えばELISAの系)を試みる必要がある。 また現在ピックアップしている候補ペプチドホルモン以外に、他にも候補ペプチドが見つかっていない可能性もあるため、データベースからの検索は継続する予定である。遺伝子およびタンパク質データベースから、シグナルペプチドがあることや、前駆体の全長が250アミノ酸以内の短いものなどを条件に、候補ペプチドをさらに検索を進めていく。 ペプチドホルモンは動物種の違いによって、存在量や分子型が異なることが多い。このため、現在はヒトのデータベースだけで検索を行っているが、他の動物種のデータベース検索も行うことで、別の候補ペプチドが検索できる可能性もある。そこで、哺乳類以外の脊椎動物のデータベースを検索することも行う。例えば鳥類や両生類などである。 さらに最新のタンパク質立体構造の予測システムであるAlphaFold3では、受容体とリガンドの組み合わせの構造が推定できる。このシステムが公開されたのちには、LGR5と候補ペプチドホルモンとの結合予測を試みることも考えている。
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