研究課題/領域番号 |
23K18296
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊嶋 崇徳 北海道大学, 医学研究院, 教授 (40284096)
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研究分担者 |
谷口 浩二 北海道大学, 医学研究院, 教授 (20627020)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | GVHD / 炎症記憶 / 造血幹細胞移植 / 腸幹細胞 / 抗原提示 |
研究開始時の研究の概要 |
造血幹細胞移植は白血病などの難治性疾患の根治的治療であるが、最大の難治性合併症で ある移植片対宿主病(GVHD)の制御が喫緊の課題である。我々はGVHDの本質が腸、皮膚幹細胞ダメージに伴う生体ホメオスタシスの破綻であることを世界に先駆けて証明した。本研究では、GVHDによる組織の炎症が腸、皮膚などの組織幹細胞へ与える「炎症記憶」を証明し、そのメカニズムを検討する。組織幹細胞の「炎症記憶」によって生体組織はGVHDに対する耐性を獲得し、GVHDの終息に関連するとの仮説を証明する。
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研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植後のGVHDの発症後に、組織に炎症記憶が残るかどうかを研究するための実験系を開発した。マウス骨髄移植モデル(B6 ->B6D2F1)において移植後、レシピエントマウスから経時的に小腸クリプトを分離し、R-Spondinなど腸幹細胞増殖因子を添加し、オーガノイド培養系を確立した。対照群は同系造血幹細胞移植とした(B6D2F1 ->B6D2F1)。形成されたオーガノイド数は同系移植群に比較し同種移植群で有意に低下していた。次いで同系移植後と同種移植後のマウスから作製したオーガノイドのRNA-seq解析を実施した。同種移植後のオーガノイドではH-2Ab1, Cd74, H-2-Eb1など抗原処理・提示に関する遺伝子群の有意な発現亢進が認められた。ATAC-seq解析では同種移植群で有意にhyperaccesibleとなったピークを多数認め、promoter領域に限定して機能解析を行ったところ、同種移植後の腸管オルガノイドは抗原処理、抗原提示に関わる遺伝子のクロマチンが開いていることが明らかとなり、具体的にはNLRC5、CD74、H2-AA、H2-EB1といった遺伝子のpromotor領域のクロマチンが開いていた。移植後のマウスのクリプトを単離し、フローサイトメトリー検査を行ったところ、同種移植後のクリプトにおいてMHC class I, class IIの発現亢進が確認された。以上の結果は、GVHDの発症によって腸幹細胞にエピゲノム変化が起こり抗原提示能を増強させる炎症記憶が存在し、これがいったんGVHD改善後に再発、再増悪するGVHDの重症度、治癒機転に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織幹細胞の炎症記憶という新たな概念を検証できる実験系が確立でき、実際、同系移植と同種移植後に大きな差がみられており、今後の研究の進展が期待できる条件が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度にはGVHDを経験した腸幹細胞にみられたエピゲノム変異と遺伝子発現プロファイル変化が炎症記憶であることを証明するため、同系および同種造血幹細胞移植後に分離した小腸クリプトから形成されるオーガノイドをパッセージし、二次、三次オーガノイドにもエピゲノム変異と遺伝子発現プロファイル変化が維持されるかを検討し、炎症記憶を確認する。
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