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シングルセル解析による加齢性インスリン分泌不全の分子機構解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K18302
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分54:生体情報内科学およびその関連分野
研究機関熊本大学

研究代表者

山縣 和也  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70324770)

研究分担者 津山 友徳  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10845960)
佐藤 叔史  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90622598)
研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
キーワード老化 / β細胞 / インスリン分泌 / エピゲノム / シングルセル解析
研究開始時の研究の概要

加齢は2型糖尿病の重要なリスク因子である。加齢に伴い、膵β細胞からのインスリン分泌が低下することが報告されているが、その分子機序は不明である。研究代表者は、加齢に伴い膵β細胞がインスリンを特異的に発現するという細胞らしさを失っていることを見出した。本研究では、老化に伴うβ細胞個性喪失の分子機構を解明し、糖尿病の新たな予防法・治療法開発のための分子基盤を確立することを目指す。

研究実績の概要

加齢は糖尿病発症の重要な危険因子であり、65歳以上の高齢者における糖尿病の有病率は全世界で20%を越えている。加齢に伴い膵β細胞からのインスリン分泌が低下することが高齢者における糖尿病有病率の増加に関与していると考えられている(Diabetologia 2020)が、加齢に伴いインスリン分泌が低下する理由は不明である。
マウス膵島を用いたシングルセルRNA-seq解析の結果、老齢マウス膵島では、インスリンの発現レベルが低く、グルカゴンやソマトスタチンなどβ細胞には発現しない他の膵島ホルモンを共発現するポリホルモーナルなβ細胞(β2細胞)が存在していることが判明した。FACSで単離した膵島細胞を用いた検討においても、老齢マウスではインスリンとグルカゴンの2重陽性の細胞が存在することが確認され、加齢によってインスリンを特異的に発現するという「β細胞らしさ」が失われており、そのためにインスリン分泌が低下する可能性が考えられた。
多能性幹細胞からβ細胞が分化する過程において、エンハンサー領域の変容と共にポリホルモーナルなβ細胞が出現することが報告されており(Cell Stem Cell 2020)、加齢によるエピゲノム変化がポリホルモナールなβ細胞の出現に関与している可能性が考えられた。単離膵島を用いたATAC-seq(オープンクロマチン領域の検出)並びにCUT&Tag(エンハンサー領域の検出)を実施するための条件検討を行い、老化β細胞のエピゲノム変容を解明するための基盤を確立した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(1)インスリンとグルカゴンの共染色の条件確立:シングルセルRNA-seq解析の結果、老齢マウス膵島では、インスリンとグルカゴンを共発現するポリホルモーナルなβ細胞が存在していることが判明した。インスリンとグルカゴンの共発現をタンパクレベルで確認するため、膵島細胞をFACSで単離し、インスリンとグルカゴンの共染色を行う系を確立した。その結果、タンパクレベルでもインスリンとグルカゴンを共発現するβ細胞が老齢マウス膵島に存在することが確認できた。
(2)膵島細胞を用いたATAC-seqの条件検討:ATAC-seqではオープンクロマチン領域にトランスポゼースを使ってタグを導入した後、ライブラリーを増幅し、次世代シークエンスを行う。10万個の膵島細胞を用いてATAC-seqを実施する条件を確立することに成功した。
(3)膵島細胞を用いたCUT&Tagの条件検討:CU&Tag解析では、プロテインAとトランスポザーゼを使用することでH3K27アセチル陽性のエンハンサー領域にシーケンスアダプターを選択的に挿入する必要がある。1万個の膵島細胞を用いて、CUT&Tagを実施するための抗体の反応条件やタグメンテーションの条件を決定することに成功した。

今後の研究の推進方策

(1)経時的なシングルセルRNA-seq解析を実施し、ポリホルモーナルなβ細胞がいずれの時期から出現するか明らかにする。
(2)ポリホルモーナルなβ細胞では細胞表面分子である糖輸送担体GLUT2の発現が低下している。GLUT2抗体を用いてβ2細胞を単離・濃縮する条件検討を行う。
(3)単離したβ2細胞を用いてATAC-seqおよびCUT&Tagを実施し、加齢によるエンハンサー領域の変容を明らかにする。老化で変容が認められたエンハンサー領域内の結合モチーフ探索や遺伝子発現クラスタリングを実施することで、ポリホルモーナルなβ細胞の出現を制御するコア転写遺伝子群を同定する。
(4)コア遺伝子の強制発現やノックダウンを行い、機能解析を行う。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Roles of β-Cell Hypoxia in the Progression of Type 2 Diabetes2024

    • 著者名/発表者名
      Yamagata Kazuya、Tsuyama Tomonori、Sato Yoshifumi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 25 号: 8 ページ: 4186-4186

    • DOI

      10.3390/ijms25084186

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] YAP/BRD4‐controlled ROR1 promotes tumor‐initiating cells and hyperproliferation in pancreatic cancer2023

    • 著者名/発表者名
      Yamazaki Masaya、Hino Shinjiro、Usuki Shingo、Miyazaki Yoshihiro、Oda Tatsuya、Nakao Mitsuyoshi、Ito Takaaki、Yamagata Kazuya
    • 雑誌名

      The EMBO Journal

      巻: 42 号: 14

    • DOI

      10.15252/embj.2022112614

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hypoxia causes pancreatic β‐cell dysfunction and impairs insulin secretion by activating the transcriptional repressor BHLHE402023

    • 著者名/発表者名
      Tsuyama Tomonori、Sato Yoshifumi、Yoshizawa Tatsuya、Matsuoka Takaaki、Yamagata Kazuya
    • 雑誌名

      EMBO reports

      巻: 24 号: 8

    • DOI

      10.15252/embr.202256227

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Emerging Role of SIRT7 in Glucose and Lipid Metabolism2023

    • 著者名/発表者名
      Yamagata Kazuya、Mizumoto Tomoya、Yoshizawa Tatsuya
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 13 号: 1 ページ: 48-48

    • DOI

      10.3390/cells13010048

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] NAD+ salvage governs mitochondrial metabolism invigorating NK cell anti-immunity.2022

    • 著者名/発表者名
      Guo X, Tan S, Wang T, Sun R, Li S, Tian P, Li M, Wang Y, Zhang Y, Yan Y, Dong Z, Yan L, Yue X, Wu Z, Li C, Yamagata K, Gao L, Ma C, Li T, Liang X
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: - 号: 2 ページ: 1-18

    • DOI

      10.1002/hep.32658

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 糖尿病発症機構の解明を目指して2023

    • 著者名/発表者名
      山縣和也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会九州地方会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 低酸素誘導性インスリン分泌不全の分子機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      津山友徳、佐藤叔史、松岡孝昭、山縣和也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会九州地方会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 膵β細胞における低酸素誘導因子ATF3の役割2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤叔史、津山友徳、山縣和也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会九州地方会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 脱アセチル化酵素SIRT7による肝糖新生制御機構の解明2023

    • 著者名/発表者名
      水本智也、佐藤叔史、津山友徳、山縣和也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会九州地方会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 熊本大学大学院生命科学研究部病態生化学講座

    • URL

      https://www.kumamoto-medbiochem.com

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-07-04   更新日: 2024-12-25  

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