研究課題/領域番号 |
23K18351
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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研究分担者 |
大川 博子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (00781296)
小玉 哲也 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40271986)
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 講師 (50468500)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / リンパ行性薬剤送達法 / 顎骨壊死 / リンパネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
近年,間葉系幹細胞の免疫機能調節能力に注目が集まり,その投与は薬剤関連顎骨壊死などの難治性疾患の治療法として期待されている。しかし,静脈血に投与した細胞のほとんどは肺に捕捉されるため,より効果的な投与法の開発が望まれている。本研究では,薬剤関連顎骨壊死動物モデルに対し,間葉系幹細胞をリンパ節内に投与して患部に送達する新たな治療アプローチを探索し,その作用機序を明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
近年、間葉系幹細胞(MSC)の免疫機能調節能力に注目が集まり、MSCの静脈投与は薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)等の難治性炎症性疾患に対して免疫を制御する画期的な治療法として期待されている。しかし、静脈血に投与した細胞のほとんどは肺に捕捉されるため、副作用や患部に到達し難いという根本的な課題がある。本研究では、「リンパ行性薬剤送達法」に着目し、MRONJに対してリンパ節内に投与したMSCをリンパ行性に患部に送達させる治療アプローチを探索し、その作用機序を細胞遊走および免疫応答の観点から理解することを目的とする。初年度は、予備実験としてMRL/MpJmsSlc-lpr/lprマウスの大腿骨骨髄より分離培養したMSCを、全身のリンパ節が生まれつき腫脹しておりリンパ節に細胞の投与が容易なMXH51マウスの腸骨下リンパ節内および比較対象群の尾静脈内に投与する実験系を確立した。また、投与する細胞数がリンパ節組織におけるCD4、CD8および炎症性サイトカインの発現に及ぼす影響を検討し、至適投与細胞数を決定した。投与した腸骨下リンパ節と伝達先の下流にある固有腋窩リンパ節におけるこれら分子の遺伝子発現について検討した結果、下流のリンパ節においてより著明な免疫応答を認めた。また、肺の組織切片観察の結果、尾静脈内投与群では投与した細胞に起因するとみられる炎症性細胞浸潤を認めたが、リンパ節内投与群ではそのような所見を認めなかったことから、リンパ行性薬剤送達法は静脈投与よりも副作用の少ない細胞投与法である可能性が示唆された。今後、免疫応答の詳細と共に顎骨壊死(ONJ)発症モデルを用いた検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本学の実験動物施設の改修工事により、実験動物を別の動物舎に移動する必要が生じ、飼育可能なマウスの数が限られたことは本研究の進展に若干の影響を及ぼした。初年度は制限された数の動物を用いての実験遂行であったが、本課題の遂行において技術的に最も課題であったリンパ行性薬剤送達法を用いた細胞投与法を世界に先駆けて確立し、静脈内細胞投与の欠点である肺における補足が本法では認めないことを明らかにできた。また、細胞を投与したリンパ節よりも下流にあるリンパ節の免疫応答が活性化されている所見が得られた。このように、本研究課題の基盤コンセプトを実証したことは大きな成果と考えており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでは健常マウスを用いて基盤コンセプトを実証してきた。今後はこれまでに構築した技術を、顎骨壊死(ONJ)発症モデルマウスを用いた検討を行い、リンパ行性薬剤送達法を用いた間葉系幹細胞の投与が病態にどのように影響するかを明らかにしていく。具体的には研究分担者の大川が確立しているビスホスホネート製剤で処置したマウスの上顎臼歯抜歯によりONJを誘発する実験系(Okawa et al, Commun Med, 2022; Okawa et al, Elife, 2022)を適用し、発症を歯肉腫脹、骨量・形態(μCT)、炎症状態(組織切片)から確認する。また、製作した動物モデルを用い、細胞移植・ホーミングの解析を行う。さらに、分離したMSCを蛍光トレーサーにて標識して移植実験に資する。ONJ発症モデルマウスにおいて、抜歯と共にMSCを腸骨下リンパ節に移植し、患部近位のリンパ節および抜歯窩へのホーミングを生物発光イメージングおよび病理組織学的観察により解析する。最終的には、確立したモデルを用い、MSCのリンパ節内投与がONJに及ぼす影響を評価する。
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