研究課題/領域番号 |
23K18356
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
辻村 恭憲 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00548935)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
那小屋 公太 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10806491)
上羽 瑠美 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10597131)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 嚥下 / P2X受容体 / 上喉頭神経 / ラット / ATP / 孤束核 / 迷走神経節 / P2X |
研究開始時の研究の概要 |
要介護高齢者の死因第1位は肺炎であり,高齢者肺炎の80%以上は嚥下機能低下に起因する誤嚥性肺炎であることから,嚥下障害への対応は喫緊の重要課題である.嚥下と類似の神経機構をもつ咳嗽の臨床では,anatomical diagnostic protocol(解剖学的理解に基づく診断と治療)の概念に従い,誘発機序の検索と治療法の決定が行われる.嚥下障害にもこの概念を導入し,エビデンスに基づく臨床を確立させたいと考えている.本研究の目的は,嚥下誘発特異的神経回路を同定し,嚥下障害におけるanatomical diagnostic protocol確立の基盤形成を試みることである.
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研究実績の概要 |
本研究はイオンチャネル型ATP受容体であるP2X受容体に着目し,嚥下誘発の神経メカニズムの解明を目的としている.本年度は,最初に麻酔下ラットを対象としてP2X受容体の作用薬(αβ-methylene ATP)の嚥下誘発効果を検証した.嚥下は,極微量の液体(3μl)を喉頭に直接滴下またはフォンフライ式フィラメントによる披裂間切痕への点状機械刺激により誘発し,顎舌骨筋と甲状舌骨筋の筋活動電位変化によって同定した.αβ-methylene ATPは濃度依存的に嚥下回数を増加させ,両側上喉頭神経の切断によって嚥下誘発は概ね消失した.続いて,P2X受容体の拮抗薬であるPPADSを喉頭に前投与し,αβ-methylene ATP投与による嚥下が消失することを確認した.以上から,P2X受容体は嚥下誘発に関与し,その感覚情報は主に上喉頭神経を経由して伝達されている可能性が高いと考えられた.さらに自然刺激によって誘発される嚥下におけるP2X受容体の役割を検討するために,P2X受容体拮抗薬PPADSを喉頭に前投与し,喉頭への機械刺激と化学刺激により嚥下を誘発した.フォンフライ式フィラメントを用いた機械刺激による嚥下誘発には,ほとんど影響はみられなかった.一方でPPADS前投与により,水,クエン酸,炭酸,嚥下ナトリウム刺激誘発嚥下が抑制された.以上のことから,P2X受容体は様々な化学刺激による嚥下誘発に寄与している可能性が示された.最後に比較として,代謝共役型ATP受容体であるP2RY1受容体の拮抗薬であるMRS2175の前投与による化学刺激および機械刺激の嚥下誘発効果を検証したが,いずれの刺激による嚥下誘発にも影響を与えなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はP2X受容体の作用薬と拮抗薬による嚥下誘発効果を検証し,末梢神経機構の一端の解明に成功した.
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今後の研究の推進方策 |
P2Xサブタイプの拮抗薬を用いることで,刺激様式ごとに標的受容体を明らかとする.
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