研究課題/領域番号 |
23K18367
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
中原 貴 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (10366768)
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研究分担者 |
望月 真衣 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (90821934)
小林 朋子 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10548283)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 歯の再生 / 歯髄幹細胞 / 細胞シート / オルガノイド / エナメル上皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
「ヒト歯の再生」は、歯科領域における究極の再生医療の一つである。過去に研究グループは、ミニブタのエナメル上皮細胞の分離に成功し、さらにヒト歯髄由来の間葉系幹細胞の無血清培養技術の開発にも成功した。本研究は、次世代医療を約束するキメラ作製技術を応用し、ブタエナメル上皮細胞とヒト歯髄幹細胞を組み合わせた“キメラ”オルガノイドを作出し、ブタ―ヒト“キメラ”再生歯を形成することで、「ヒト歯の再生」に寄与する再生医療技術の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ヒト歯の再生に向けた萌芽期となる挑戦的研究であり、治療抜歯で得られる智歯由来の組織から初代培養による間葉系幹細胞(MSC)の分離を行い、ブタ―ヒト歯性細胞から成る“キメラ”オルガノイドの作出に供する歯性MSCスフェロイドを安定的に作製する培養法の確立を目標とした。 歯胚間葉に相当する歯性MSCスフェロイドを担う歯性幹細胞としては、臨床的に獲得することができ、さらに歯の発生学的起源に由来する細胞特性が期待できることを鑑みて、歯髄由来のMSCに着目した。歯髄MSCの分離には種々の細胞分離法が知られるが、本研究では我々の研究グループが独自に開発した無血清培養による細胞分離法に着手した。すなわち、歯髄組織を酵素処理することによって解離した歯髄細胞を、ウシ胎仔血清を使用しない(FBSフリー)培養液によって初代培養を行い、活発に増殖する細胞を継続的に培養し、サブコンフルエントに達したところで継代培養を行って細胞を分離した。継代数3~4の歯髄細胞は、MSC表面抗原解析と多分化能評価を行い、並行して細胞移植によるin vivo評価も行った。その結果、各種MSCマーカー陽性、骨・脂肪分化能を有し、in vivoでは新生硬組織を形成する優れた歯髄MSCの分離に成功した。 さらに我々は、この歯髄MSCを特定の培養条件のもとで無血清培養すると、多層構造を示す細胞シートを形成することを明らかにした。「自己多層化細胞シート」と命名した新規細胞シートを用いることで、“キメラ”オルガノイドに資する歯髄MSCスフェロイドを作製することを目的として、現在は同細胞シートの作製、そしてスフェロイド構造物の作製に向けて、種々の培養条件の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況として、まずは歯性MSCスフェロイドを作出する培養法の確立に向けて、臨床的に獲得できる歯髄由来のMSCの分離に着手した。歯髄MSCの分離には、我々の研究グループが独自開発した無血清培養による細胞分離法を選択し、歯髄組織をコラゲナーゼ・ディスパーゼで酵素処理することによって解離した歯髄細胞を、FBSフリー培養液によって初代培養を行った。複数の智歯から得た歯髄組織からは、患者の個体差に影響されることなく活発に増殖する歯髄細胞を分離することができ、サブコンフルエントで継代培養を続けた。継代数3~4の歯髄細胞を用いて、フローサイトメーターによる各種MSC表面抗原(CD29, CD44, CD73, CD90, CD105陽性、CD14, CD34陰性)を認め、骨と脂肪の多分化能を確認した。骨補填材と混合した細胞移植実験では、ヌードマウスの背部皮下に移植した骨補填材周囲に新生硬組織を認めた。以上から、優れたMSC特性を有する歯髄幹細胞の分離に成功した。 我々は、この歯髄MSCを特定の培養条件のもとで無血清培養を行い、多層構造を示す細胞シートを形成することを明らかにし、この新規細胞シートを「自己多層化細胞シート」と命名した。同細胞シートは、歯髄幹細胞の増殖能を維持しつつも、細胞外マトリックスを豊富に産生した多層構造であることから、“キメラ”オルガノイドに資する歯髄MSCスフェロイドに適したユニークなニッチ環境を構築していると考えている。したがって、自己多層化細胞シートの特性解析を行い、スフェロイド構造物を作製する新たな培養法の確立を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、無血清培養下で分離した歯髄MSCが作製する自己多層化細胞シートの特性を詳細に解析し、歯髄MSCスフェロイドの作製に適した培養条件の確立を進める。同細胞シートは、豊富な細胞外マトリックスから成る多層構造を有し、温度応答性培養皿で作製される一般的な単層の細胞シートよりも機械的強度が高いことが想定される。そこで、細胞シートの機械的特性を評価するため、細胞シートにフォースゲージ(荷重測定端子)を圧接して荷重を測定する材料工学的解析を行う。この解析データを基にして、細胞シート構造物から三次元立体的なスフェロイド構造物を作製する培養法の確立を行う。 以上の研究を推進する方策は、細胞シートの特性評価として全く新しい材料工学に基づいた解析法の導入であり、スフェロイド作製技術に資する重要な基礎データになり得るため、本研究を強力に推進できると考えている。
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