研究課題/領域番号 |
23K18368
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (20350829)
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研究分担者 |
堀部 寛治 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (70733509)
西田 大輔 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (00843608)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 骨芽細胞 / ビタミンD受容体 / 石灰化パラドクス / 慢性腎臓病 / 高ビタミンD症 |
研究開始時の研究の概要 |
動脈と骨で真逆に石灰化が進む病態は、「石灰化パラドクス病」と呼ばれ、心血管イベントのリスクとなっている。我々は骨芽細胞のビタミンD受容体(VDR)が石灰化パラドクス病進行に関与することを発見した。本研究では、この発見を基に、骨芽細胞由来石灰化パラドクス責任因子を同定する。そのために、骨芽細胞特異的VDR欠損マウスと対照マウスのトランスクリプト―ムおよびセクレトームの比較解析を行い、石灰化パラドクス責任因子候補を見出す。責任因子候補について、細胞外基質石灰化促進能および抑制能を検証し、責任因子を同定する。
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研究実績の概要 |
老化、糖尿病、慢性腎臓病、骨粗鬆症および高ビタミンD症は、骨密度低下と動脈石灰化[カルシウム(Ca)の沈着]の同時進行が頻繁に認められ、動脈と骨で真逆に石灰化が進む病態を伴う。このような病態を石灰化パラドクス病と呼ぶ。動脈壁石灰化を特徴とする石灰化パラドクス病は、不思議なことにi)Ca過剰時とii) Ca不足時の両極端なCa代謝状態において発症する。2023年度は、我々は、骨芽細胞(骨細胞も含む)のビタミンD受容体(VDR)がCa過剰時における石灰化パラドクス病進行を促進することを発見し、報告することが出来た(J Steroid Biochem Mol Biol.232:1063512, 2023 )。本研究の目的は、骨芽細胞のRNA発現(トランスクリプト―ム)および分泌タンパク質(セクレトーム)のデュアルオミックス解析を用いて、石灰化パラドクス責任因子を同定することである。2023年度は以下の実験を行った。<i, Ca過剰病態>高用量の活性型ビタミンD投与をもってi) Ca過剰病態誘導法とした。骨芽細胞特異的VDR欠損Osterix-Cre:VDR-cKOマウスはこの誘導法において、石灰化パラドクス病を発症しなかった(同上)。現在、Osterix-Cre:VDR-cKOマウスと対照マウスのトランスクリプトーム比較解析により、石灰化パラドクス責任候補因子を探索中である。<ii, Ca不足病態>慢性腎臓病によるCa再吸収障害をCa不足病態とする。Osterix-Cre:VDR-cKOマウスと対照マウスにアデニン給餌を行い、慢性腎臓病による石灰化パラドクス病を誘導を試みた。残念ながら、動脈の石灰化は認められなかったが、Osterix-Cre:VDR-cKOマウスの方が、心血管イベントリスク要因が高まっていることを見出すことが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ca過剰時における石灰化パラドクス病発症モデルである高ビタミンD症マウスモデルの作製に成功し、動脈、肺、腎臓の軟組織石灰化と同時に、骨吸収の亢進と骨形成の低下を観察することが出来た。また、これらの病態すべてが骨芽細胞のVDRを介することを証明し、J Steroid Biochem Mol Biol誌に成果を発表することが出来た。また、Ca不足時の石灰化パラドクス病の素因である慢性腎臓病モデルマウスの作製にも成功し、血清パラメーターや骨の病態など基本データを収集することが出来た。これらのデータから、骨芽細胞のVDRが慢性腎臓病に伴う石灰化パラドクス病態進行を防ぐ役割を有する可能性を見出し、成果を2024年1月の第8回日本骨免疫学会ウィンタースクールで発表することが出来た。2023年度に作製した慢性腎臓病モデルでは残念ながら動脈や他の軟組織で石灰化を検出出来なかったが、慢性腎臓病に加え他の因子も動脈石灰化に必要である可能性を見出したことは、本年度の貴重な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の<ii, Ca不足病態>モデル研究において、動脈石灰化の素因となる表現型は認められたものの、動脈の石灰化を認めなかった。文献的考察から、本研究において用いているC57BL6マウス系統は、ヒトや他のマウス系統に比べ動脈石灰化ストレスに対して耐性であり、アデニン給餌による慢性腎臓病誘導に加え、高リン負荷がプラスアルファとして必要と思われる。今後はアデニン+高リン給餌を行い、動脈などの軟組織石灰化を再現よく誘導できるか調べる。また2023年度に成功したアデニン給餌による慢性腎臓病から回収した骨サンプルのトランスクリプトーム解析を2024年度は行う。生きたマウスで隣接分子ビオチン標識を行い、骨芽細胞の標識セクレトームを得る。研究協力者のセントルイス・ワシントン大学のMajor博士の研究室において代表者が、血漿を質量分析に供して定量プロファイルを作成する。標識は、小胞体(ER)に局在化させたビオチンリガーゼTurboIDを用いる。骨芽細胞のRNA発現(トランスクリプト―ム)および分泌タンパク質(セクレトーム)のデュアルオミックス解析を用いて、石灰化パラドクス責任因子を同定する。
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