研究課題/領域番号 |
23K18391
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
和田 崇之 大阪公立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70332450)
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研究分担者 |
中村 寛海 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (00332445)
谷本 佳彦 神戸市健康科学研究所, 感染症部, 研究員 (10780984)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 腸内細菌 / 定着因子 / 宿主適応 / 細胞接着 / ゲノム解析 / 病原性大腸菌 / 病原細菌 / 定着 / ゲノミクス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,感染性細菌が宿主にどのようにして接着するのかに焦点を当て,人や動物の腸内や体表に存在する微生物の「接着因子」を集中的に解読する.ペットや家畜,食品などに含まれる細菌の接着因子を直接比較することで,細菌の宿主への定着能や適応性、細菌と宿主の複数の関係性や,細菌の感染拡大リスクを認識・評価する新しい手法の開発を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究は、腸内細菌(とくに大腸菌)において、宿主への定着を担うシャペロン・アッシャー(CU)線毛遺伝子に関する遺伝的多様性と、その宿主適応との相関を俯瞰的に解析することを目的としている。今年度は研究計画初年度にあたり、学術論文での実績は無く、学会発表も限定的である。網羅的・俯瞰的な解析は途上段階にあり、特定の菌株群を対象とした解析が中心となっている。 先行研究によって研究室で分離・保有していたヒト由来大腸菌株群のうち、(1) 尿路感染由来株(90株)、(2) 腸管凝集性大腸菌産生性耐熱性毒素 (EAST1) 保有株(健康者由来16株、下痢症患者由来29株)からヒト培養上皮細胞の感染実験によって接着能が確認された菌株についてゲノム解読した。 (1) 接着能が確認され、ゲノム解読した5株のうち、既知のヒト細胞接着性CU線毛を持たない3株について、アッシャー遺伝子の系統解析によって新規性の高い線毛遺伝子が見出された。 (2) 接着能が確認され、ゲノム解読した16株から、定着因子として既報告が多いγ2、κクラスCU線毛が複数見出された。これらの系統解析では、1遺伝子を除いて新規の接着因子候補であることが確認された。 任意の細菌ゲノム配列に対して、アッシャー遺伝子を相同性検索してクラス分類できる解析プラットフォームを構築した。これにより、公共データベースに保管されている大量の遺伝子情報や、ショットガンシーケンスデータを対象として網羅的な線毛遺伝子の検索と配列集積が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種動物群、ヒト臨床試料を由来とする大腸菌株のゲノムデータ(10,270株)をデータベースから取得し、それぞれの菌株が保有するCU線毛遺伝子を網羅的に抽出した。各オペロンに必ず1遺伝子含まれるアッシャー遺伝子をターゲットとして、菌株あたりのオペロン保有数や配列多様性を計測し、由来ごとに集団比較したところ、本遺伝子にみられる系統クラスごとの保有率や配列多様性には有意な差がみられ、各株が持つCU線毛のレパートリーとその生存場所(ニッチ)における相関が確認された。現在は、線毛構造を形成し、直接宿主と接着する機能を持つアドヘシンをターゲットとして同等の分析を行い、宿主間相関を解析する手法の開発を進めている。これらの進捗は、CU線毛の分布という新たな観点から細菌生態を再定義する糸口となる。 試料収集に関して、ヒト、ウシ、ペット(イヌ、ネコ、その他)、野生動物などの便試料由来増菌培養について、それぞれ完了した。これらの試料から菌株コレクションを作成するとともに、直接DNAを抽出して今年度実施予定のショットガン配列解読に利用する。 以前より保有していたヒト由来大腸菌株(尿路、便など由来)について、細胞接着試験による接着能判定にしたがって、陽性株についてゲノム解読を実施した。これらは既知の細胞定着因子を持たず、候補となる因子をCU線毛のクラス分類から検証中である。 以上の状況により、初年度における進展として、特に大量の配列解析に向けたプラットフォーム構築がなされた点で、想定以上の展開が得られていることから、本課題の進捗は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、CU線毛遺伝子の相同性を利用し、周辺遺伝子を集中的に配列解読する手法(ターゲットキャプチャー)を予定していたが、コストが研究開始当初より高額化したこと、技術的な難点がなお存在することなどから、試料中の全配列を大量の解読するショットガンメタゲノム解析の方が応用性が高いこと、既存のデータ活用などが容易であることから、同手法に向けたデータ取得と試料収集を進める。 データベースから取得したゲノム配列に基づくCU線毛遺伝子解析は、各株が保有するアッシャー、アドヘジン遺伝子配列を元に、菌株単位でのβ多様性解析、ネットワーク解析の手法を探る。相同性のみを手がかりに配列検索が可能なアッシャー遺伝子とは異なり、アドヘジン遺伝子は相同性が低く、遺伝子配置もバリエーションに富むことから、検索工程が多岐に及ぶことが想定される。これらを確立させたのち、CU配列に基づく近縁性から菌株集団の多様性解析を行い、菌株の由来宿主(動物種、臨床検体種など)との相関を調べる。 昨年度までにゲノム解読が終了している大腸菌株(ヒト細胞接着性、病原因子保有など)については、そのCU線毛遺伝子のレパートリーから、特に病原性と関わりがある可能性が高いCU線毛系統(γ2,γ3,κクラス)を中心に、新規性が高い株、臨床上において重要性が高い株の接着因子機能を遺伝子組換え体を作成して検証する。
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