研究課題/領域番号 |
23K18419
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
金田 勝幸 金沢大学, 薬学系, 教授 (30421366)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 薬物依存 / 運動 / ミオカイン / アイリシン / ストレス |
研究開始時の研究の概要 |
ストレスによる依存性薬物への欲求増大が依存症治療を困難にしているが、その機序には不明な点が多い。一方、運動により筋肉から遊離される内在性因子群のミオカインは薬物欲求を抑制できる可能性がある。ミオカインの一つのアイリシンは脳に移行し、細胞接着分子インテグリンに結合する。また、インテグリンの活性化はシナプス伝達を調節する。これらの知見から、運動により遊離されたアイリシンがシナプス伝達を調節し、依存関連脳領域の活動抑制を介して薬物欲求を抑制する可能性が考えられる。本研究では、融合的研究手法でこの仮説を検証し、新規治療薬の創製を目指す。
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研究実績の概要 |
ストレスによる麻薬などの依存性薬物への欲求増大が依存症治療を困難にしている。本研究では、ストレスによる様々な影響を緩和することが知られる運動が、ストレス誘発性薬物欲求増大を抑制する可能性を検証するとともに、その脳内メカニズムを解明することで薬物依存症の新規治療法・治療薬の開発に対する基盤的知見を提供することを目的とした。今年度は以下の成果を得た。 ①ストレスによるコカイン欲求増大を抑制する運動量とタイミングの解明:薬物欲求を定量評価できるコカイン条件付け場所嗜好性試験に社会敗北ストレスを組み合わせることで、ストレスがコカイン欲求を増大させる独自の実験系を確立した。この実験系において、ストレス前に回し車(RW)を1時間回転させると、ストレスによるコカイン欲求増大が顕著に抑制されることを見出した。一方で、15分間の回転運動では有意な影響は認められないことを明らかにした。 ②運動により分泌され、薬物欲求を抑制する内在性因子の探索:運動は筋肉からミオカインと呼ばれる内在性因子群を遊離させ、その一つであるアイリシンは脳に移行することが報告されている。そこで、運動の代わりにアイリシン脳室内投与の影響を調べたところ、ストレスによる薬物欲求を抑制できることを見出した。 ③アイリシンの作用部位の解明:アイリシンの作用部位を解明するため、代表者が薬物欲求への関与を見出している内側前頭前野、ストレスや報酬情報処理に関わる海馬にアイリシンを局所投与したところ、後者への投与がストレスによる薬物欲求増大を抑制したことから、アイリシンの作用部位が海馬であることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開始当初の研究計画を予定どおり実施し、研究実績の概要に記載の成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、以下の計画を実施する。 ①アイリシンは細胞接着分子インテグリンに結合することから、この結合が運動によるストレス誘発性薬物欲求増大に関与するかを、特異的阻害剤の海馬内局所投与によって明らかにする。 ②液体クロマトグラフ質量分析装置により、運動後のマウス血清中の各種ミオカインの分泌量を分析し、他のミオカインの作用について解析する。 ③脳スライス標本を用いたパッチクランプ法により、アイリシンが海馬でのシナプス伝達や膜特性を変化させるか否かを調べることにより、アイリシンによる薬物欲求抑制のメカニズムを解明する。
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