研究課題/領域番号 |
23K18425
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10322041)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 運動 / 脳・神経 / カテコラミン / 海馬 |
研究開始時の研究の概要 |
運動は心身の健康を維持する最良の手段であるが、運動の継続にはそれなりの意欲を必要とする。しかし、一度習慣になると苦もなく続けられるため、運動の継続によって運動の意欲が高まる正のフィードバックが存在すると考えられる。研究代表者は最近の研究によってノルアドレナリン(NA)がドパミンD1受容体を活性化すること、さらに運動がこのNA-D1シグナルを増強することを発見した。NA-D1シグナルの増強に伴って運動量も増加するため、両者の間には正のフィードバック機構が存在する可能性がある。本研究では、この仮説に基づき、運動、NA-D1シグナル、運動の意欲を結ぶ分子機構と神経回路メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
回し車を用いてマウスに自発運動を行わせ、海馬におけるノルアドレナリン-ドパミンD1受容体(NA-D1)シグナルを、電気生理学的に解析した。海馬スライス標本を作製し、歯状回からCA3に投射する苔状線維が形成するシナプスにおいて、興奮性伝達に対するノルアドレナリンの効果を記録した。NA-D1シグナルはアドレナリンβ受容体遮断薬存在下におけるシナプス修飾作用として観察した。運動を行わせる期間、及び運動を行わせてから解析を行うまでの期間をシステマティックに変化させた。運動による増強効果は数日で検出され、2週間程度で最大になり、その後はほとんど変化が見られなかった。運動を中止すると数週間で元のレベルに戻った。電気生理解析において最大の効果が見られた2週間の運動後の標本を用いて、遺伝子発現解析を行ったところ、D1受容体の発現変化が検出された。 NA-D1シグナルと行動の対応を検討するため、回し車の回転数及び、回し車撤去後のケージ内活動量を測定した。NA-D1シグナル強度と回転数又は活動量の増加の間には関連が見られた。 運動からNA-D1シグナル増強に至る経路を担う中枢シグナル経路を検討するため、各種受容体リガンドを用いた薬理学実験を行った。GABAA受容体機能を増強させる薬物の投与によって、運動の効果が低下する傾向が見られ、神経興奮が寄与する可能性が示唆された。 同様にして、運動による行動変化のメカニズムを検討するため、受容体リガンドを用いた解析を開始した。さらに、NA-D1シグナルと行動変化の関係を検討するため、ノルアドレナリン神経機能の障害と行動の関係の解析も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した解析には全て着手し、ほぼ予想した結果が得られているため、概ね予定通りに進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度は運動からNA-D1シグナル増強に至るメカニズムの解析を中心に研究を進める。初年度に開始した中枢シグナル経路の薬理学解析を継続するとともに、骨格筋から放出されるマイオカイン等の末梢由来のシグナルについても解析を行う。必要に応じて遺伝子改変マウスも使用する。電気生理解析をスクリーニングとして用いて、関与が示唆されたシグナル経路に関しては、D1受容体遺伝子発現解析を行う。NA-D1シグナルの増強にはD1受容体発現変化以外も関与する可能性があるため、この点についても、薬理学的解析又は細胞内シグナル経路の分子の発現解析等を行う。 並行して、NA-D1シグナル変化と行動変化の間の因果関係の解析を行う。運動によるNA-D1シグナル増強を阻害することが示された操作に関して、同様にして、行動変化に及ぼす影響を解析する。さらに、初年度に着手した、ノルアドレナリン神経機能障害モデルを用いた解析を継続するとともに、AAVによるノックダウン等を利用した、歯状回→CA3経路特異的な操作の解析に着手する。
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