研究課題/領域番号 |
23K18432
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮崎 充功 広島大学, 医系科学研究科(保), 准教授 (20632467)
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研究分担者 |
砂川 玄志郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (70710250)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 人工冬眠 / 骨格筋 / QIH / 筋萎縮 / 冬眠 / 骨格筋萎縮 / タンパク質代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人工冬眠モデルを応用した“温かい冬眠”による骨格筋萎縮耐性の獲得機構を解明し、“衰えない筋肉”を作り出すことにチャレンジする。ヒトの寝たきり防止を可能とする介入戦略の開発を将来的なゴールに見据えて、冬眠という低代謝状態の誘導によって達成されうる骨格筋萎縮耐性の獲得機構を解明することが本研究の短期的目標となる。体温低下を前提としない全身性低代謝状態である“温かい冬眠”という概念を提唱することで、冬眠研究による成果をヒトへ医療応用するための一歩を刻むことができる。
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研究実績の概要 |
本研究では“温かい冬眠”による骨格筋萎縮耐性の獲得機構を解明し、“衰えない筋肉”を作り出すことにチャレンジする。ヒトの寝たきり防止を可能とする介入戦略の開発を将来的なゴールに見据えて、冬眠という低代謝状態の誘導によって達成されうる骨格筋萎縮耐性の獲得機構を解明することが本研究の短期的目標となる。各種の薬理学的介入やホルモン補充療法など、骨格筋萎縮防止を目指した方策はこれまで多く提案されてきたが、効果的な介入方法として臨床展開された例はない。先行研究に比較した本研究の独自性は、“筋肉の衰えの原因を探り、それを防ぐ”という従来方針から、“使わなくても衰えない筋肉を作り出す”という戦略へと抜本的にシフトした点、そしてそれを達成するために冬眠動物が持つ“衰えない筋肉”という特性に着眼した点にある。また体温低下を前提としない全身性低代謝状態である“温かい冬眠”という概念を提唱することで、冬眠研究による成果をヒトへ医療応用するための一歩を刻むことができる。 2023年度における研究実績の概要としては、人工冬眠モデル(QIHマウス)を対象に、短期間で急激な骨格筋萎縮が誘導される坐骨神経切除法を採用し、筋萎縮に伴い発現変動する遺伝子群 (DEGs) を明らかにした。さらにこのDEGsのうち、低体温に依存しない低代謝誘導(温かい冬眠)に伴って特異的な発現変動を示す遺伝子群の絞り込みを行い、筋萎縮耐性遺伝子群の候補を複数獲得している。今後は、この候補遺伝子群の機能解析を行うことで、“衰えない筋肉”を達成するための十分性を検証していくことが取り組むべき課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの身体は使わないと衰える。しかし冬眠動物は、5-6ヵ月におよぶ不活動状態を経験するにも関わらず様々な身体機能を維持することができる、使わなくても衰えない身体という特性を有する。本研究では、冬眠を「能動的に誘導される全身性の低代謝状態の継続」と捉え、低体温に依存しない低代謝誘導(温かい冬眠)によって獲得される身体機能維持機構を明らかにすることで、最終的にはヒトへの応用を可能とする健康科学基盤の創成を目指す。 本研究では、人工冬眠モデルマウスを対象に、温かい冬眠に伴って獲得される骨格筋萎縮耐性プログラムの解明を目指し、「課題1: 能動的低代謝(冬眠)誘導性の骨格筋萎縮耐性遺伝子群の同定」「課題2: 筋萎縮耐性遺伝子群による筋タンパク質代謝制御機構の解析」の2つの主要研究課題を設定している。このうち課題1について、人工冬眠モデル(QIHマウス)を対象に、短期間で急激な骨格筋萎縮が誘導される坐骨神経切除法を採用し、筋萎縮に伴い発現変動する遺伝子群 (DEGs) をトランスクリプトーム解析手法を用いて検証し、低体温に依存しない低代謝誘導(温かい冬眠)に伴って特異的な発現変動を示す遺伝子群を絞り込み、筋萎縮耐性遺伝子群の候補を複数獲得した。
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今後の研究の推進方策 |
冬眠誘導性DEGsのうち、筋タンパク質代謝を正に制御する(タンパク質の合成促進/分解抑制)可能性のある筋萎縮耐性候補遺伝子の骨格筋細胞における機能解析を行い、「衰えない筋肉」という形質を獲得・維持させている因子を同定する。具体的には、マウス骨格筋から骨格筋組織幹細胞であるサテライト細胞を単離した後に筋管細胞へと分化させ、各候補因子の強制発現系およびノックダウン系を用いるて筋タンパク質合成/分解活性測定やシグナル伝達系解析を行い、筋タンパク質代謝を正に制御する候補因子の機能解析を行う。また候補遺伝子をマウス骨格筋で過剰発現・ノックダウンさせ、獲得される筋萎縮耐性のin vivoにおける十分性を検証する。有力な候補因子については骨格筋特異的遺伝子改変マウスを作出し、廃用性筋萎縮モデルを併用した解析を宮崎が実施することで、“使わなくても衰えない筋肉”という形質獲得を可能とさせる新規因子を同定していく。
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