研究課題/領域番号 |
23K18433
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
上住 聡芳 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (60434594)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 結合組織 / 間葉系間質細胞 / 骨格筋 / サルコペニア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、骨格筋をモデルとして、筋の結合組織に臓器特異性を付与すると考えられる細胞外基質成分に注目し、MSCおよび結合組織が起点となる臓器老化のメカニズム解明を目指す。これまでの生命・医学研究は、実質細胞に焦点を当て、セントラルドグマを中心とした細胞内部の機構から生命現象を理解するものが中心であったが、本研究は、外(結合組織)から内(実質)へとパラダイムを転換させ、新たな臓器恒常性維持機構を解き明かすことに挑戦する。
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研究実績の概要 |
結合組織は、ほぼ全身の臓器の間質を埋めるように分布する。コラーゲンを中心とした種々の細胞外マトリックスを主たる構成成分とし、各臓器の構造をサポートする機能を持っている。結合組織の形成は、臓器の間質に存在する間葉系間質細胞(MSC)と呼ばれる細胞が担っている。これまでの研究では、臓器機能や老化のメカニズムを理解する上で、主として実質細胞に焦点を当て行われてきた。一方で、結合組織やその形成を担うMSCについては、どの臓器のものも類似と見なされ、構造的支持体として以上の重要性が注目されることはなかった。その中において代表者らは、骨格筋組織に存在するMSC(筋MSC)の同定に世界で初めて成功し(Nat Cell Biol, 2010)、筋MSCを欠損するマウスを作製することで、本細胞が骨格筋の健全性維持に必須の役割を果たしていることを明らかにしてきた(J Clin Invest, 2021)。代表者らは、MSCおよび結合組織の生物学的役割のさらなる理解を目指して、様々な臓器のMSCをRNA-seqによって比較解析した。その結果、MSCはそれらが存在する臓器に特異的な遺伝子発現プロファイルを示し、筋MSCに着目してさらに解析を進めたところ、筋MSC特異的に発現する細胞外マトリックスKeratocan (Kera)の同定に成功した。 2023年度はKeraの加齢変化と、ノックアウト(KO)マウスを用いたKeraの機能解析を実施した。若齢マウス由来の筋MSCと比べ、老化マウス由来の筋MSCではKeraの発現がほぼ消失していた。さらに、Kera KOマウスの骨格筋を解析し、筋量の減少、および、筋量に依存しない固有筋力の低下を見出した。以上のことから、Keraの加齢性の発現低下は老化による筋量・筋力の低下に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したように、Keraの加齢変化と、Kera KOマウスを用いて骨格筋組織におけるKeraの機能的重要性を明らかにすることができ、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度において、筋MSC特異的な細胞外マトリックス因子であるKeraの発現の加齢変化解析と、Kera KOマウスを用いたKeraの骨格筋組織における機能解析を行い、Keraの加齢性の発現低下が老化による筋量・筋力の低下に関与しているという知見を得た。そこで、2024年度は以下の研究項目を実施し、Keraの生物学的役割をさらに追究する。 1)骨格筋の結合組織形成に及ぼすKeraの機能解析 Keraは筋MSC特異的な細胞外マトリックス因子であり、Kera KOマウスでは固有筋力の低下が見られる。筋の結合組織には力を伝達する特有の機能があるが、Kera欠損による固有筋力の低下から、この結合組織機能に異常を来したと考えられる。骨格筋の結合組織はその解剖学的位置から、筋上膜、筋周膜、および、筋内膜に細分化される。そこで、Keraの高感度in situ hybridizationを実施し、Keraの発現の局在を精査し、その機能的意義の考察につなげる。また、コラーゲン線維の構造や配向を観察可能なSHG (Second Harmonic Generation)顕微鏡を用いて、Kera KOマウス骨格筋の結合組織を観察し、Keraの結合組織形成に及ぼす機能を探究する。 2)Keraによる筋線維の維持メカニズム Kera KOマウスを用いて、結合組織の変化が筋線維に引き起こす生物学的変化を精査する。各種免疫染色を実施し、筋線維の数や横断面積の変化、筋線維タイプに及ぼす影響を精査する。また、筋組織のシングル核RNAseqを行い、Kera欠損で筋核に生じる遺伝子発現変化を精査する。
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