研究課題/領域番号 |
23K18436
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
亀井 康富 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70300829)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 骨格筋 / 筋萎縮 / 飢餓 / カヘキシア / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
骨格筋は様々な疾患、不活動、加齢、飢餓などで萎縮する。筋萎縮には二面性(単純化すれば疾患に付随する「悪い(抑制すべき)」筋萎縮と生理的に必要な「良い」筋萎縮)がある。本研究では、様々な筋萎縮モデル(特にがんカヘキシーと絶食・カロリー制限)の骨格筋FOXOシグナルを解析し、各筋萎縮モデルの特異性に着目し筋萎縮発症の分子基盤を明らかにするとともに、筋萎縮が骨格筋や他臓器に及ぼす生物学的役割を明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
骨格筋は様々な疾患、不活動、加齢、飢餓などで萎縮する。がんや糖尿病における筋萎縮は健康寿命を縮めるため、骨格筋の量・機能の維持は重要である。一方、飢餓による筋萎縮はエネルギーを脳などに供給する生理的な役割を有する。また、飢餓と関連するカロリー制限は実験動物の寿命を延長する。すなわち、筋萎縮には二面性(単純化すれば疾患に付随する「悪い(抑制すべき)」筋萎縮と生理的に必要な「良い」筋萎縮)がある。転写調節因子FOXOはさまざまな筋萎縮時に骨格筋で発現増加し、タンパク質分解など筋萎縮遺伝子を活性化する。本研究では、様々な筋萎縮モデル(特にがんカヘキシーと絶食・カロリー制限)の骨格筋FOXOシグナルを解析し、各筋萎縮モデルの特異性に着目し筋萎縮発症の分子基盤を明らかにするとともに、筋萎縮が骨格筋や他臓器に及ぼす生物学的役割を明らかにすることを目的とする。 本年度の解析では筋FOXO欠損マウスにがん細胞を移植し、カヘキシーモデルを作製し、がんカヘキシーによる筋萎縮がFOXO欠損により抑制されることを筋重量の測定により確認した。網羅的遺伝子発現解析を実施し、カヘキシーによりIL6受容体など複数の遺伝子発現がFOXOによって活性化し、絶食時の標的遺伝子との差異を見出した。さらに、カヘキシーと絶食時の網羅的代謝産物変化(メタボローム)解析を実施し、特徴的な代謝産物の変化を見出した。 一方、筋FOXO欠損マウスを絶食させると肝臓の白色化が観察されるが、この表現型を調査した。トリグリセリド量の測定および組織観察により脂肪肝が生じていることを確認した。また、筋FOXO欠損マウスを絶食させたときの血中アミノ酸レベルを測定し、筋肝連関にアミノ酸が関与する可能性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がんカヘキシーに関する解析について、網羅的な遺伝子発現と代謝産物の解析を実施することにより骨格筋FOXOシグナル解明(がんカヘキシーと絶食との比較)のための有用なデータを得た。また絶食時の筋肝連関について表現型の解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、筋萎縮モデル(がんカヘキシーと絶食・カロリー制限)の骨格筋FOXOシグナルの解析を実施する。 ・がんカヘキシーに関する解析:絶食時の筋萎縮ではFOXO―C/EBPδ軸が重要であることをこれまで見出しているが(FASEB J 2022)、がんカヘキシーによる筋萎縮でもFOXO―C/EBPδが機能するか否かを検証する。またタンパク質分解経路(ユビキチンプロテアソーム系、オートファジー系)に着目して、変化を解析する。さらに、筋FOXO欠損マウス(がん細胞を移植)骨格筋の網羅的遺伝子発現結果のバイオインフォマティクス解析によってがんカヘキシー時の筋萎縮に及ぼすFOXOの役割を明らかにする(がんカヘキシーと絶食を比較)。 ・絶食・カロリー制限に関する解析;筋FOXO欠損マウスを絶食させたときの肝臓からのトリグリセリド分泌や血中トリグリセリド量の変化を解析する。また絶食時に筋FOXO欠損マウスの骨格筋で発現増加する脂質関連遺伝子の変化を、網羅的遺伝子発現データを利用して明らかにする。そしてFOXOが絶食・カロリー制限時の脂質利用の機構として働いているか否かを明らかにする。絶食・カロリー制限ではFOXOと転写調節因子ATF4の関与が示唆され(FASEB J 2022)、in vitroの解析を実施する。 ・さまざまな筋萎縮モデルに関する解析:筋FOXO欠損マウスを様々な病理的筋萎縮モデル(糖尿病、不活動など)に順次供する。骨格筋のオミクスデータをもとにバイオインフォマティクス解析を実施し、様々な筋萎縮に共通するもの、特異的な変化を探索する。筋萎縮モデル作製後の時間経過(急性・慢性変化)にも注意してデータを解析する。
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