研究課題
挑戦的研究(萌芽)
末梢からの感覚入力は、四肢の運動を正確にコントロールするには必須である(感覚性失調)。しかし、その治療法は未だ限られている。本研究では、脳オシレーションとその同期化によって脳情報のシステム統合が実現されるという仮説に基づいて、手指に対するオシレーション振動刺激と、それと位相同期させたオシレーションとして非侵襲的脳刺激法を一次体性感覚野に与える手法(中枢―末梢チューニング)で、体性感覚の機能障害を回復させる新規介入を創出する。
末梢からの感覚入力によるモニタリングとフィードバックは、四肢の運動を正確に統御するには必須である。そのため、末梢神経障害や脳卒中によって重度の感覚障害が生じると、四肢の位置を知覚できなくなり、感覚性失調を呈する。日常生活に重度の支障をきたす機能障害だが、治療法は未だ限られている。本研究では、脳オシレーションとその同期化によって脳情報のシステム統合が実現されるという仮説(binding理論)に基づいて、手指に対するオシレーション振動刺激と、それと位相同期させたオシレーションとして非侵襲的脳刺激法(Non-invasive Brain Stimulation: NIBS)を一次体性感覚野に与える手法(中枢―末梢チューニング)で、体性感覚の機能障害を回復させる新規介入を創出し、リハビリテーション科学にブレイクスルーをもたらす。マイコンを用いてオシレーション刺激を生成・制御するシステムを構築し、末梢へのオシレーション刺激呈示はハプティックリアクタを用い、振動センサによって刺激強度を実測できるようにするとともに、中枢へのオシレーション刺激は、同システムから経頭蓋的直流・交流電気刺激(transcranial DC/AC electrical stimulation: tDCS/ACS)に制御信号を送ることで実現する。体性感覚機能の定量的評価は、中枢-末梢チューニング介入の前後で、von-Frey monofilament法と二点識別法を用いた感覚閾値の測定、および手指の振動刺激に対するSSSEPによって行った。研究1年目には、中枢-末梢チューニング介入を行うシステムを開発し(分担:櫻田)、健常者での予備的な実験を行った(分担:小金丸)。
2: おおむね順調に進展している
中枢-末梢チューニング実験の手順としては、①介入前の感覚閾値とSSSEPを計測、②SSSEPと同位相になるようにtDCS/ACSを設定し、末梢オシレーション刺激と中枢オシレーション刺激による中枢-末梢チューニング介入を20分間行い(同期条件)、③介入後の感覚閾値とSSSEPを計測、必要があれば、30分後や翌日にも感覚閾値とSSSEPの計測を行う。対照実験としては、tDCS/ACSのシャム刺激および、②での中枢刺激と末梢刺激のオシレーションの位相を揃えない非同期条件によって行う。oscillotherapeuticsの原理からは、同期条件であればSSSEP増大と感覚機能の増強が認められるが、位相の非同期条件の場合、感覚系のチューニングとはならないのでSSSEPや感覚機能は増強しないか、位相反転の場合には逆に低下すると予想される。予備的実験は順調に推移している。
研究2年目には、患者群を対象にランダム化二重目隠しプラセボ対照試験デザインでのパイロット研究を行い、torelabilityを評価する。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
Progress in Rehabilitation Medicine
巻: 8 号: 0 ページ: n/a
10.2490/prm.20230026
10.2490/prm.20230018
Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry
巻: 94 号: 11 ページ: 938-944
10.1136/jnnp-2022-329966
Brain Stimulation
巻: 16 号: 3 ページ: 933-935
10.1016/j.brs.2023.05.024
10.2490/prm.20230015
Heliyon
巻: 9 号: 4 ページ: e15564-e15564
10.1016/j.heliyon.2023.e15564
Frontiers in Human Neuroscience-Brain Imaging and Stimulation
巻: 17 ページ: 1082555-1082555
10.3389/fnhum.2023.1082555
巻: 17 ページ: 1082556-1082556
10.3389/fnhum.2023.1082556