研究課題/領域番号 |
23K18457
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
本間 尚文 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (00343062)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 計算機システム / 情報セキュリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,高信頼・高安全なアビオニクス(航空制御電子機器)を特殊な専用デバイスを用いずに汎用半導体デバイスにより構築する技術の確立を目指し,特に,宇宙環境下で安定動作するセキュリティハードウェア(暗号機能を実行するハードウェア)の設計理論を開拓する.具体的には,小型衛星・ロケットに搭載されて地上局の間の通信等を担うアビオニクスを対象とし,宇宙線により多数のソフトエラー(宇宙線が半導体素子を貫通して生じるデータ誤り)が発生する状況下においても高信頼・高安全に動作するセキュリティハードウェアを開発するとともに,陽子線照射実験/実機実験を通してその有効性を実証する.
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研究実績の概要 |
本研究では,高信頼・高安全性なアビオニクス(航空制御電子機器)を特殊な専用デバイスを用いずに汎用半導体デバイスにより構築する技術の確立を目指し,宇宙環境下で安定動作するセキュリティハードウェア(暗号機能を実行するハードウェア)の設計理論の構築を推進した.特に,小型衛星・ロケットに搭載されて地上局の間の通信等を担うアビオニクスを対象とし,宇宙線により多数のソフトエラー(宇宙線が半導体素子を貫通して生じるデータ誤り)が発生する状況を想定した.まず,汎用メモリ格納時にソフトエラーにより生じるデータ誤りを完全に検知する軽量完全性検証手法を開発した.提案手法では,ソフトエラーによる多様な誤りを高速かつ効率的に検知するため,テプリッツ行列等の軽量ハッシュ関数を基本とする.これにより,暗号学的ハッシュ関数を使う場合と比べて大幅なオーバーヘッドの低減を達成し,計算リソースの乏しい組込みシステム用途の半導体デバイスにおいても通常処理・通信を妨げない実装を実現した.また,上記に並行して,演算時に生じ得るソフトエラーの影響に対して,演算結果の誤差を許容範囲内に抑える新たなデータ表現・処理を開発した.具体的には,上位桁と下位桁に異なる数表現(上位桁に冗長表現)を用いるハイブリッド表現に基づくデータ処理手法を開発した.これにより演算中に訂正困難なエラーが発生してもデータ処理による最大数値誤差の大幅な低減を実現した.特に,小型衛星・ロケットの姿勢制御に使用される浮動小数点演算の数値データに適用し,ハイブリッド表現による演算回路の設計とその誤差評価を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた成果が得られており,今後の計画に対する道筋も見えている.具体的には,汎用メモリ格納時にソフトエラーにより生じるデータ誤りを完全に検知する軽量完全性検証手法を開発し,暗号学的ハッシュ関数を使う場合と比べて大幅なオーバーヘッドの低減を達成した.これにより,計算リソースの乏しい組込みシステム用途の半導体デバイスにおいても通常処理・通信を妨げない実装が可能となった.また,上記に並行して,演算時に生じ得るソフトエラーの影響に対して,演算結果の誤差を許容範囲内に抑える新たなデータ表現・処理を開発できた.研究を進めるにつれて実験施設が一部使用できない課題・関連する課題も出現しているが,そうした課題に対しては机上やシミュレーション技術でも対応可能であり,当初研究計画を変更するほどではない.以上から,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り現時点では研究を遂行する上での問題点はないため,今後も当初研究計画に沿って推進していく.すなわち,初年度に開発した完全性検証手法およびハイブリッドデータ表現・処理手法を組込みシステム向けCPUソフトコアに適用したプロトタイプシステムを開発する.プロトタイプは,CPU (Central Processing Unit) ソフトコアとプログラマブルロジックを連携して利用可能な再構成可能なゲートアレイを用いて開発する.必要に応じてオープンソースのCPUコアを利用する.その上で,実装したデバイスに対して陽子線照射装置を用いた実証実験を実施する.実験は東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンターの装置を利用する.同センターの装置が不具合等により使用できない場合には机上計算もしくはシミュレーション技術により代替する計画である.本研究で実施する実験では,宇宙環境を想定した強度の陽子線の網羅的な照射から生ずるデータ誤りの種類等を統計的に評価する.さらに,同陽子線照射実験から得られたデータをもとに実システムをシミュレートする.
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