研究課題/領域番号 |
23K18458
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新宅 勇一 筑波大学, システム情報系, 助教 (80780064)
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研究分担者 |
高橋 昭如 東京理科大学, 創域理工学部機械航空宇宙工学科, 教授 (00366444)
高安 亮紀 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60707743)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | マルチスケール解析 / 統計力学 / 有限要素法 / 転位 / 塑性 / 結晶すべり / 確率論 / 均質化法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、ミクロ構造のばらつきを考慮して、転位の運動とマクロ的な塑性変形を繋ぐために、確率論に基づくマルチスケール解析を開発することで、統計力学の観点から新たに再構築した塑性理論の創生に挑戦する。具体的には、転位動力学に基づく手法とマルチスケール解析手法を組み合わせることで、ミクロ構造における転位の運動を直接数値解析し、硬化挙動との関係をマクロ材料特性として求める。さらに、ミクロ構造におけるばらつきを考慮するために、Sparse gridと呼ばれる数値積分を確率論的選点法に新たに導入することで、現実的な数のサンプルで統計量の計算を可能とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、ミクロ構造のばらつきを考慮して、転位の運動とマクロ的な塑性変形を繋ぐために、確率論に基づくマルチスケール解析を提案することで、統計力学の観点から新たに再構築した塑性理論の創生に挑戦する予定である。その目標に向けて、本年度は転位の運動を記述する数値解析手法である離散転位力学を用いて、介在物のバラつきによる塑性変形の違いによる初期降伏応力の統計量を評価した。また、結晶すべりに基づいて微視的な塑性変形を記述する結晶塑性モデルと離散転位動力学を繋ぎ合わせる方法について検討した。しかしながら、離散転位動力学がナノスケールの現象を対象としているのに対して、結晶塑性モデルはマイクロスケールを対象としており、両者のスケール差が大き過ぎるため、力学的な関連性を保ちながら、2つの理論を繋ぎ合わせることが難しいことがわかった。例えば、転位密度などの平均量を結晶塑性モデルへ反映させることも可能ではあるが、転位の状態に関する情報の多くが失われてしまうため、従来の現象的なモデル化と大差ない結果となることが予想された。そこで、結晶塑性モデルに替わって、転位と塑性変形を記述可能な代替手法について調査を実施した。その結果、連続転位動力学と呼ばれる転位束を状態変数として扱う手法を新たに採用することで、転位束の運動と塑性変形を関連付けることが可能なことがわかった。加えて、既往研究によれば、転位1本毎の運動と転位束として挙動を統計的に関連づけることで、離散転位動力学の結果から連続転位動力学へと矛盾なく、接続可能であると報告されている。そのため、連続転位動力学を採用することで、本年度実施した離散転位力学による統計評価を上手く組み合わせられる可能性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、離散転位動力学を用いてミクロスケールにおける転位の運動を数値シミュレーションし、その結果からマクロ的な塑性変形を評価する予定であった。しかながら、離散転位動力学がナノスケールの現象を対象とするのに対して、結晶塑性モデルはマイクロスケールを対象としており、両者のスケール差が大き過ぎるため、力学的な関連性を保つことが難しいことがわかった。そこで、現在は、結晶塑性モデルに替わって、転位束を状態変数として扱う連続転位動力学を新たに採用する方針で検討している。これまでの文献調査の結果、連続転位動力学の支配方程式はMaxwell方程式と酷似しているため、研究代表者が開発した既存の手法を応用できる可能が高い。そのため、進捗状況としては研究方針の転換による遅れはあるものの、十分に挽回可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、結晶塑性モデルに替わって、転位束の運動と塑性変形を関連付けることが可能な連続転位動力学を新たに採用する方針で検討している。現時点では、連続転位動力学の支配方程式はMaxwell方程式と酷似しているため、コードの開発に当たっては研究代表者が開発している既存の手法を転用する予定である。加えて、既往研究によれば、離散転位動力学の結果を統計的に評価することで、連続転位動力学における転位束の運動を記述する状態方程式の係数を決定できると報告されているため、本年度実施した離散転位力学による統計評価を上手く組み合わせられる可能性が高い。ただし、現在よりも多くの確率変数や統計計算の効率化には、当初の研究計画に沿って、新たな数値解析手法を取り入れる必要があると考えている。
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