研究課題/領域番号 |
23K18467
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分60:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
塚本 和也 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (20452823)
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研究分担者 |
藤本 晶子 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (40578803)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 低軌道衛星通信システム / 電離圏電波伝搬 / 太陽活動 / 輻輳制御アルゴリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高効率性と高耐障害性を具備する低軌道衛星通信システムの実現を目指し、以下の3つの課題に取り組む。まず、(1)電離圏時空間変動モデルとデータ同化技術を活用して電離圏揺らぎを推定する。更に(2)低軌道衛星通信システムに適した輻輳制御を比較・予測し、通信性能予測モデルを構築する。最後に、(3)予測した電離圏揺らぎに適切な輻輳制御アルゴリズムに適応的に切り替える手法を提案・実装し、長期間の実験を通じて季節変動への耐性も検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、高効率性と高耐障害性を具備する低軌道衛星通信システムの実現を目指し、(1)電離圏時空間変動モデルとデータ同化技術を活用した電離圏揺らぎの推定、(2)低軌道衛星通信システムに適した輻輳制御を比較・予測した通信性能予測モデルの構築、(3)予測した電離圏揺らぎに適切な輻輳制御アルゴリズムへの適応切替手法の提案・実装と季節変動への耐性の検証、に取り組む。本年度の実績を以下に示す。 (1)に関して、ソフトウェア無線を用いたGPSシンチレーション計測システムの整備・開発では、廉価な部品で構成するシステムを構築し、GSPシンチレーション指標の高時間分解能なキャンペーン観測を成功させた。一方で、全電子量TECデータから算出できる電子密度擾乱指数ROTIを用いた電離圏揺らぎ時空間(3D)マップの可視化技術、ならびにHF短波電波リモートセンシングによる電離圏密度高度分布データの高時間分解能へのデータ再構成技術の開発を行い、多次元全球電離圏時空間変動モデルの作成に向けた学習データの準備を整えた。これらの成果に関して3件の対外発表を行った。 次に(2)に関して、低軌道衛星、特にStarlinkの回線としてBusinessとResidualの2種類のクラスが複数のTCP輻輳制御に与える影響を調査し、回線の基礎特性を把握した。更に双方のエンド端末がStarlink回線に接続される状況を想定し、この環境がTCP輻輳制御に与える影響を実機実験で調査した。その結果、現実環境での低軌道衛星通信ではパケットロスが頻発する事が分かり、衛星間切替を可能な限り低減する事の重要性を明らかにした。そこで、シミュレータns3-leoを用いて、現状のハンドオーバ発生頻度、及び今後の予測を行い、性能改善を実現するための経路制御の方針について検討を開始している。これらの研究成果について、2件の対外発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、全体として概ね順調に進展していると考えている。 課題1「準リアルタイム電離圏変動データ計測と電離圏揺らぎ時空間変動マップ生成」に関しては、ソフトウェア無線を用いたGPSシンチレーション計測システムの整備・開発では、廉価な部品で構成するシステムを構築し、GSPシンチレーション指標の高時間分解能なキャンペーン観測を成功させた。一方で、全電子量TECデータから算出できる電子密度擾乱指数ROTIを用いた電離圏揺らぎ時空間(3D)マップの可視化技術、ならびにHF短波電波リモートセンシングによる電離圏密度高度分布データの高時間分解能へのデータ再構成技術の開発を行い、多次元全球電離圏時空間変動モデルの作成に向けた学習データの準備を整える事が出来ている。 次に課題2「低軌道衛星通信システムに適した輻輳制御の検討」は、低軌道衛星通信システムとして、Starlinkを利用して、既存の各種輻輳制御手法がStarlinkが用意している複数の通信回線クラス、及びエンド端末の接続環境によってどのように変化するか、通信適性を詳細に調査する事が出来た。更に、これらの調査の結果から、現実環境での低軌道衛星通信ではパケットロスが頻発する事が分かり、衛星間切替を可能な限り低減する事の重要性を明らかにした。そこで、シミュレータns3-leoを用いて、現状のハンドオーバ発生頻度、及び今後の予測を行い、性能改善を実現するための経路制御の方針について検討を開始している。 最後に課題3「電離圏揺らぎの予測に基づく適応輻輳制御の有効性評価」は、R6年度より、課題1で作成した「全球電離圏時空間変動モデル」によって推定される電離圏揺らぎに対し、課題2で考案した適切な輻輳・経路制御アルゴリズムに適応的に対応する手法を考案・実装する予定である。 以上より、現在までは全ての課題が概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って、引き続き実施する。 課題1に関して、具体的には、前年度に整備したGPSシンチレーション計測システムによる定常観測を実施し、その計測データ、全電子量TEC平面データを用いた電離圏揺らぎ時空間(3D)マップ、太陽風データを統合した多次元全球電離圏時空間変動モデルを作成する。 課題2に関して、具体的には前年度に調査したStarlinkの通信性能の変動を含むデータセットと、課題1で設計・作成した「多次元全球電離圏時間変動モデル」の関係性を、研究分担者である藤本と協力して機械学習を用いて分析して、「多次元全球通信性能変動マップ」を生成することを目指す。更に、このモデルを用いて各種輻輳・経路制御手法によってどの程度通信性能を改善できるか、をシミュレーション実験によって明らかにする事を目指す。 課題3に関して、「多次元全球通信性能変動マップ」の予測に基づき、適切な輻輳・経路制御アルゴリズムに適応的に切り替える手法の考案を開始する。
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