研究課題/領域番号 |
23K18488
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長谷川 圭介 埼玉大学, 理工学研究科, 講師 (20733108)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 空中超音波 / 音響ホログラフィ / 超音波工学 / 振幅制御 / 電子工学 / ホログラフィ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,従来の位相制御型超音波放射面による収束超音波応用が空間的に狭い領域でしか有効でないという問題について,大面積の振幅制御超音波放射面を構築することで解決を図るものである.環境に溶け込んだ大開口超音波放射面が実現することにより,従来の空中超音波研究のすべてが屋内全域を対象とするスケールアップバージョンに刷新されうる.超音波による非接触触覚提示を例にとれば,これまでの主に単一ユーザの手指のみを対象としたシステムの枠を脱し,屋内の任意の場所に存在し,自由に運動を行う不特定多数のユーザの身体上の任意の場所に触覚提示を行う,という非拘束全身触覚システムの実現可能性につながる.
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研究実績の概要 |
2022年度末の段階で行った基礎的な研究成果として同相駆動振動子のアレーの上に振幅マスクをかぶせるという手法によって十分な振幅の空中超音波焦点を生成できることを実証済みである.当該年度はこの成果に基づき,たわみ振動を有する金属板の上に金属板の位相,振幅情報をもとに新たに設計された振幅マスクをかぶせることにより超音波焦点を形成可能であることについて原理的な検証を終えた.この手法は同相駆動振動子を多数用いてアレーを形成する場合に比して大面積化,省コスト化の意味で実用性の高いものであるが,振動面上に放射位相の分布が生じているためこれを利用して従来のフレネルレンズを元にした手法で空中で焦点形成を行うことは不可能であった.研究代表者らはこのような放射面からの放射を選択的に遮蔽し,所望の空中位置で焦点の形成を行うマスクの設計則を導出し,音響計測実験を通じてこれが有効であることを実証した.振動板の材質,寸法の設計は有限要素法を用いた数値シミュレーションによってランジュバン型超音波振動子による加振が大きな振幅の共振モードとして生じる状況のうち実現可能なものの中からパラメータを選択することによって行った.実際のマスクの設計においては振動板の表面振動をマイクロフォンの2次元操作によって計測し,この振動分布に基づいた形で振幅分布を決定している.この際に振動板表面を点音源の集合として取り扱う形で放射超音波をモデリングしているが,実験の結果このモデリングは実際の音響放射をよく表していることがわかり,結果として意図した通りの超音波音場を実現できていることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった大開口振動面の電子的な表面振幅制御に向け,大開口の超音波放射面の実現方略として一枚のたわみ振動板を用いた非平面波放射を利用することに思い至り,その有効性を確認することができた一方で,振幅の電子制御の方略については当初想定していた開孔アレーの制御を行う場合効率の面で大きな問題が生じうることが予備実験によって明らかになった.これに対する有効な代替策として決定的な方略を定めるに至っていない.これらの進捗状況により,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
たわみ振動面の安定した大振幅振動を達成するには現状の検証における単一支持点による板の加振とは異なる方略での振動系設計が必要になることがわかっている.このため,振動板の支持および加振を多数の振動要素によって行う2号機の作成を行い,真に大振幅の振動ソースを作り出すことを今年度の研究の大きな目標としている.同時に,電子的な振幅分布制御についての方略として開孔制御の効率化およびその他の方式の模索という両面から現実的な手法を確立することをもう一つの目標として設定する.
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