研究課題/領域番号 |
23K18498
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分61:人間情報学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
亀崎 允啓 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (30468863)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | マスタフォロワシステム / 身体図式 / 動的調整システム / 人間機械系 / 獲得機序 |
研究開始時の研究の概要 |
マスタ・フォロワ・システム(MFS)において、フォロワ身体をあたかも自己身体かのように操るには、身体図式の変容に基づく転移錯覚が重要になる。MFSの作業性能向上には、運動と感覚に関する結合関数を使用条件に応じて調整することが効果的となるが、「人が、複数の身体図式を保有でき、それらを意識的かつ瞬間的に置換できるか?」ということは明らかになっていない。本研究では、MFS結合関数の動的調整システムを構築し、新概念となる選択的身体図式(SBS)の獲得機序とその作用の構成論・実験的検証を行う。変動的表象としてのSBSによる、しなやかな人間機械系設計のための予備的データ・知見を得る。
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研究実績の概要 |
マスタ・フォロワ・システム(MFS)結合関数の動的調整システムを構築し、これを用いてSBS獲得機序・作用の分析を行う。本研究では、MFS作業における共通要件と考えられる精度・効率・疲労の改善を目的とする。 2023年度は、A.動的調整システムの構築において、作業性能の向上を図れるように、作業空間の非線形幾何変換を行う基礎理論の構築に取り組んだ。運動に関する条件として、持続性・精度・安定性低下に着目した。筋活動度・可操作度・力操作度を統合したベクトル情報を含む腕の作業空間を参照マップとして定義し、物体把持や過負荷等の意味情報を含む作業頻度マップを作成した。両マップの比較により、当該パラメータの最大化・最小化問題とした定式化を行った。例えば、拡大によって、手を伸ばした作業での筋活動度を任意の値に低減するものである。この他にも、回転、ゲインの疎密変更、動作領域の制限を定義した。感覚に関する条件として、把握性・注意性・安心性低下に着目し、拡大・縮小、マスキング・フィルタリング等を実装した。自己受容感覚のずれが違和感の原因となるため、上記の運動結合関数に紐づく形で設計を行った。簡易的なシミュレーション実験から、低疲労疲労、高位置決め精度を実現するためのMFS結合関数(拡大,回転など)を調整することで、筋疲労を低減できることが示唆された。さらに、領域制限を行うことで精度が向上できる可能性が示唆され、MFS結合関数の動的調整システムの基礎理論の有用性を実験データから定量的に確認できた。動的調整システムにおける運動と映像の相互効果は明らかになっていないため、2024年度に取り組むB.選択的身体図式(Selective Body Schema: SBS)獲得機序の解明で実施する被験者実験を通して明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、MFS結合関数の動的調整システムを構築し、SBS獲得機序とその作用の構成論・実験的検証を行うことが目的である。恒常的表象としての身体図式から、変動的表象としてのSBSという新概念による「しなやかな人間機械系」設計のための予備的データ・知見を得るため、2023年度は、A.動的調整システムの構築において、作業性能の向上を図れるように、作業空間の非線形幾何変換を行う基礎理論の構築に取り組んだ。低疲労疲労、高位置決め精度を実現するためのMFS結合関数(拡大、回転など)を調整することで、筋疲労を低減できることが示唆された。さらに、領域制限を行うことで精度が向上できる可能性が示唆された。MFS結合関数の動的調整システムの基礎理論の有用性を実験データから定量的に確認できたことは大きな成果となった。 これらのことから、運動と感覚に関する結合関数を使用条件に応じて調整するための基本技術が構築されており、「人が、複数の身体図式を保有でき、それらを意識的かつ瞬間的に置換できるか?」という問いに迫るための理論的な整理も行うことができた。以上より、当研究課題は順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、選択的身体図式(Selective Body Schema: SBS)獲得機序の解明を中心に、A.動的調整システムの構築の改良を継続して取り組む。身体図式の獲得機序に関して、実験心理学に基づく分析が一部進んでいることから、条件比較による構成論的解明を試みる。各条件の比較評価には、ミラーニューロン活動時に賦活する腹側運動前野や運動主体感が低下すると活動が高まる下頭頂葉等に着目した脳機能イメージング解析、一次運動野の機能的変化を捉える筋電図、さらに、作業精度や時間に基づくタスク評価値を用いて分析する。まず、感覚(視・力・触覚)フィードバックの有無について調査する。次に、体性感覚とその予測信号の一致性は主体感生成に直接関与するため、運動に対する視覚遅延の有無を評価する。そして、上記の結合パラメータを動的調整する際の、調整頻度やその程度による違いを比較する。ユーザが違和感なくSBSを選択する方法として、音声や表示によるプライミングや皮膚刺激等による無意識化の図式変容を促す仕掛けも検討する。
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