研究課題/領域番号 |
23K18511
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分62:応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
細川 千絵 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (60435766)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 神経細胞 / フェムト秒レーザー / シナプス伝達 / 細胞操作 |
研究開始時の研究の概要 |
集光フェムト秒レーザーを単一神経細胞の局所部位に照射して神経細胞を刺激することにより、光照射に伴い過渡的に応答する神経細胞間シナプス伝達強度の時空間操作を実現する。レーザー刺激による神経細胞間のシナプス結合特性を明らかにすることにより、神経活動を高い空間精度、時間精度で操作可能な手法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、集光フェムト秒レーザーを単一神経細胞の局所部位に照射して神経細胞を刺激することにより、光照射に伴い過渡的に応答する神経活動の時空間ダイナミクスを明らかにする。レーザーの照射位置や照射タイミングを最適化し、神経シナプス部位における機能分子の分子数や分子動態の蛍光イメージング計測を行い、レーザー刺激に伴う神経細胞間シナプス伝達強度の時空間操作を実現する。 今年度は、レーザー刺激による神経シナプス伝達強度変化の検証を目的として、正立顕微鏡にフェムト秒レーザーを導入した顕微鏡システムにパッチクランプシステムを組み込み、顕微蛍光解析と神経電気活動との同時計測を試みた。ラット海馬由来培養神経細胞を対象として、単一神経細胞に集光フェムト秒レーザーを短時間照射し、蛍光カルシウムイメージングとパッチクランプ電位計測によりレーザーに誘発された神経活動の時空間ダイナミクスを検証した。神経細胞膜表面にフェムト秒レーザーを集光したところ、照射した細胞において蛍光強度が急激に増加し細胞内へのカルシウムイオン流入がみられた。周囲の神経細胞においても同様の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が確認されたことから、レーザー照射した細胞において誘発された神経活動がシナプス伝達を介して周囲の神経細胞に伝搬したと考察した。蛍光カルシウムイメージングとパッチクランプ計測との同時計測を試みた結果、レーザー照射直後より細胞内の蛍光強度の増加とともに高頻度の細胞膜電位スパイクが確認された。膜電位スパイクの発生タイミングの解析により、フェムト秒レーザーを照射した神経細胞において神経活動の時間パターンが変化する傾向もみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、レーザー刺激により神経細胞間シナプス伝達強度を時空間的に操作することを目的として、(1)レーザー刺激による神経シナプス伝達強度変化の検証、(2)レーザー刺激による神経細胞間シナプス伝達強度の操作について取り組む。 今年度は、(1)レーザー刺激による神経シナプス伝達強度変化の検証のため、正立顕微鏡にフェムト秒チタンサファイアレーザー (中心波長800 nm, パルス幅~100 fs、繰り返し周波数80 MHz)を導入した顕微鏡システムにパッチクランプシステムを組み込み、顕微蛍光解析と神経電気活動との同時計測を可能とするシステムを構築した。ラット海馬由来神経細胞を対象として、フェムト秒レーザーを神経細胞に短時間照射し、蛍光カルシウムイメージングとパッチクランプ電位計測によりレーザーに誘発された神経活動の時空間ダイナミクスを検証した。集光フェムト秒レーザー照射に伴う細胞内カルシウムイオン濃度を評価するため、蛍光カルシウム指示薬を負荷した培養神経細胞の細胞膜表面にフェムト秒レーザーを8ミリ秒間照射した。レーザーを照射した直後より細胞体において蛍光強度が急激に増加し、細胞内へのカルシウムイオン流入がみられた。レーザー照射した細胞において、周囲の神経細胞においても高頻度のスパイク状の蛍光強度変動が確認されたことから、レーザー照射した細胞において誘発された神経活動がシナプス伝達を介して周囲の神経細胞に伝搬したと考察した。フェムト秒レーザーを単一神経細胞に集光した結果、蛍光強度の増加と同時にレーザー照射直後より高頻度の細胞膜電位スパイクが確認され、レーザー照射前後で細胞膜電位スパイク数が増加する傾向がみられた。 以上より、おおむね当初の計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
レーザー刺激による神経細胞間シナプス伝達強度の操作を目的として、集光フェムト秒レーザーが誘起する細胞膜形態変化を計測する。レーザー照射に伴う神経細胞内へのイオン流入過程を考察することによりレーザー刺激メカニズムを明らかにする。レーザー刺激とシナプス部位の分子動態との相関性、レーザー刺激と神経シナプス伝達強度の抑制、増強現象との相関性について検証し、神経細胞間のシナプス伝達強度変化を明らかにする。レーザー刺激の多点照射についても検討を開始する。高頻度電気刺激により神経細胞間のシナプス伝達強度を長期間にわたり増強するシナプス可塑性が誘発されることが知られている。集光フェムト秒レーザーの高頻度照射に取り組み、神経シナプス可塑性の誘発やそれに伴う神経回路の結合特性変化を明らかにする。
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