研究課題/領域番号 |
23K18522
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
渡邉 朋信 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (00375205)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 放射線被ばく障害 / 揺らぎ解析 / 予防医学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、放射線感受性が異なるヒトiPS細胞を5種類用意し、心筋分化を誘導する。一日辺り0.2グレイ以下5分程度の低線量域の放射線に暴露させ、経時的に、細胞のラマン散乱スペクトルを単細胞精度で数多く収集する。収集されたスペクトルデータから、機能不全の発症に伴う強度変化(従来の細胞状態の定義)に先だって、信号強度が揺らぐパラメータ「揺らぎ因子」を同定する。次に、「揺らぎ因子」に関連する生命現象(放射線被ばく影響であればDNA損傷/修復、活性酸素産生、ミトコンドリア損傷、遺伝子発現変化等)を調査し、それらに摂動を与えることで「揺らぎ」を抑制させる。これにより、機能不全発症の予防を試行する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、生命科学における研究戦略に、揺らぎの「概念」を導入することである。より具体的には、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)に対する低線量域放射線照射による心筋分化後の晩発性機能不全発症を実験対象とし、機能不全を計測データの「揺らぎ」により発症以前に検出し、さらに、その揺らぎを制御することで機能不全を予防することを目指す。由来の異なるiPS細胞5種に対する放射線被ばく影響を調査する研究は、同研究費助成事業(基盤B,21H03599)により実施された。2023年度の本研究課題においては、細胞状態の「揺らぎ」を計測するための技術基盤の開発を行った。 開発した手法は、二つである。ひとつは、従来の免疫染色法を用いた方法である。直径250ミクロンの円状に細胞が接着するように加工したガラス基板を作成し、その基盤上でiPS細胞を培養する。分化誘導を施すと、細胞は場所依存的な分化様相を提示する。分化誘導後0, 12, 24, 48時間毎に免疫染色観察を行うことで、細胞が分化する過程における揺らぎ(ヘテロジェナイティ)を定量できる。なお、定量のために細胞核を自動で認識し周辺細胞との差異を計算する機械学習モデルを構築した。 もうひとつは、単細胞ラマン散乱スペクトル計測-トランスクリプトーム同時開発技術である。我々は、本研究開始前より、細胞ひとつひとつのラマン散乱スペクトルを計測し、その細胞をピックアップしトランスクリプトーム解析するシステムを構築してきた。機械システムは、全て導入済であり、本研究課題においては、統括制御システムの構築を行った。このシステムでは、培養皿内の細胞を自動で探索・発見し、ラマン散乱スペクトルを計測後、その細胞をエッペンチューブに移し替えることが出来る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題に必要とされる技術的な開発を全て完了できた。放射線被ばく影響による差異が「揺らぎ」により検出される確証は無いものの、本研究課題の核心である「揺らぎ」による状態遷移の予測については、細胞分化の実験系を併用することにより達成されると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに、技術的課題については全て解決できている。2024年度は、開発した技術を用いて実データを収集し、揺らぎの解析を行っていく。また、同時に、本研究課題開始前に収集されていた様々な生物学データについても、揺らぎの観点から解析を行い、「揺らぎ」による細胞状態予測実現の是非に一定の答えを提示する予定である。
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