研究課題/領域番号 |
23K18524
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
内井 喜美子 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (90469619)
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研究分担者 |
戸村 道夫 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (30314321)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 環境DNA / フローサイトメトリー / シングルセル |
研究開始時の研究の概要 |
環境DNA分析は生物多様性観測の新手法として大きな期待を集めている。しかし現行の環境DNA手法は、複数個体由来のDNAの混合物の分析に留まり、得られた遺伝情報がどの個体に由来するか特定することはできない。従って、保全学において重要となる交雑や遺伝子浸透の検出や、生態・進化学に欠かせないゲノムワイドな集団遺伝解析を実現するには、個体情報の検出を可能とする技術革新が求められる。本研究では、環境DNA研究と細胞研究の異分野融合共同を通し、セルソーティング技術を用いた環境水からの高等動物細胞または核の分取・単離法を確立することにより、個体情報の取得を可能とする新規的な環境DNAアプローチの創出に挑む。
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研究実績の概要 |
水や土壌といった環境媒体から抽出したDNA(環境DNA)を分析することにより、そこにどんな生物が生息するかを迅速に明らかにする生物調査法が近年急速に発達している。環境DNA試料には、原理的に採取した時点および地点の生物群集情報がまるごと含まれている。したがって、環境DNA分析は、従来の捕獲に基づく手法と比較したとき、簡便性・迅速性に勝るだけでなく、網羅性にも優れた生物調査法として期待されている。現在の環境DNA分析では、環境媒体からDNAを一度に抽出する。つまり環境DNA試料は多種多個体に由来するDNAの集合であるため、その分析は、個体群または群集レベルの情報を得ることに優れる一方、個体レベルの情報を知ることはできない。そこで本研究では、フローサイトメトリーを応用することにより、環境DNA分析では不可能であった個体情報の取得を実現するアプローチの創出を目指す。研究初年度である2023年度は、環境水に含まれるDNAの様態の解明と、環境水からの高等動物細胞核の分取法の確立を中心として研究を進めた。まず、メダカの飼育水を、均一孔径を持つ10μmから0.2μmまでのメンブレンフィルターを用いてろ過し、様々な粒子サイズを含むろ液を作製した。これらのろ液を遠心分離により濃縮し、濃縮液を二種の染色色素による同時染色に供した上で、セルアナライザーを用いて解析した。セルアナライザーにより得られた前方散乱光(細胞の大きさの指標)および二種の蛍光シグナル強度の違いにより、細胞核と推定される粒子を多く含むサイズ画分を決定し、さらにそのサイズ画分の濃縮液を共焦点レーザー顕微鏡を用いて立体的に観察することにより、動物細胞および細胞核の存在を確認した。そこで、次のステップとして、このサイズ画分に存在する動物細胞核を、セルソーターを用いて選択的に分取するための条件を検討し、最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飼育水を用いた実験段階ではあるが、環境水には壊れていない動物細胞核が存在することが、セルアナライザーおよび顕微鏡観察により確認された。また、セルソーターを用いた動物細胞核の選択的分取を行うための条件設定が完了した。本年度に得られたこれらの知見に基づき、環境水中からの細胞核の分取が可能であるという見通しが立っていることから、次年度の研究進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究の核である、セルソーターを用いた環境水からの動物細胞核の分取法の確立を進める。動物細胞核の分取法が確立すれば、最も挑戦的な課題である、シングルセル(核)の単離を目指し、最適な手法の検討を進める予定である。
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