研究課題/領域番号 |
23K18533
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
江成 広斗 山形大学, 農学部, 教授 (90584128)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | ニホンザル / ボイストラップ / 加害度 / 鳴声 / 生物音響 / モニタリング |
研究開始時の研究の概要 |
ニホンザル(以下サル)による各種被害拡大を背景に、駆除数は増加している一方で、個体数/群れ数の評価を計画的に実施している自治体は少ない。この理由は低コストの個体群モニタリング手法が未開発であることに起因する。本研究では、サルを対象にボイストラップ法(VT法)による個体群モニタリング手法の確立を目的とする。サルは複雑な個体間交渉を行うため、社会的・生態的・行動的意味を持つより多様な鳴声を日常的に利用する。そこで、細分化される多様な鳴声種を判別して自動検知可能なVT法を開発することで、サルの群れの数や構成頭数だけでなく、加害度の推定も目指す。
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研究実績の概要 |
捕獲技術の高度化と普及を受け、農業・生活被害をもたらすニホンザルの捕獲圧は各地で高まっている。一方で、低コストで実施可能な個体群モニタリング手法は未開発であるため、計画性のある個体数管理(群れ管理)に課題を抱えている自治体は少なくない。そこで本研究では、ニホンザルを対象としたボイストラップ法(VT法)を開発し、加害性を含む群れの属性を生物音響(鳴声)により効率的に評価する手法の開発に取り組んだ。なお、VT法とは、筆者がニホンジカを対象に開発した新たな個体群モニタリング手法で、現在よく使用されるカメラトラップよりも、検知範囲や作業コストの面で優れていることを明らかにしている。 ニホンザル対象のVT法の開発(鳴声判別精度の評価)を目的に、本研究では白神山地の内陸側・日本海側の各所に高性能レコーダを設置し、広く本種の鳴声データの収集を行った。また、対象群を絞って鳴声様式(種類や発声頻度など)の詳細を記録していくために、当該山地に分布する群れを麻酔銃で生体捕獲し、GPSテレメトリを装着した。 あわせて、これまで朝日山系と白神山地に位置する集落において蓄積してきた生物音響データを活用し、ニホンザルの鳴声(主要な5つの鳴声タイプ)を半自動で抽出する機械学習モデルを構築した。抽出された鳴声から、その検知頻度(=群れの襲来頻度)と継続時間(=群れの滞在時間)を推定し、本種のもつ農地や人に対する加害性(加害度)を判定する簡便法の開発にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
加害レベルの異なる群れが分布することが明らかになっている、白神山地の内陸側(西目屋村)と日本海側(深浦町・鰺ヶ沢町)の山林に計10台の高性能レコーダを秋期に設置し、生物音響データを継続的に記録できた。また、西目屋村に分布する2つの群れ(計3頭の成獣メス)を麻酔銃にて捕獲し、継続的な追跡が可能となった。これにより鳴声発生様式(種類・頻度など)と、群れの属性との詳細な紐づけを実施することが可能となり、上記のレコーダで得られた結果の高度な解釈に繋げられることが期待される。 あわせて、筆者がこれまで白神山地と朝日山系で蓄積してきた生物音響データから、ニホンザルの鳴声抽出モデルを構築し、群れが集落に襲来する頻度やそこでの滞在時間の推定を行った。襲来頻度と滞在時間の2つの指標だけでも、群れの加害性(特に群れ捕獲対象となる加害レベル4~5)の判定が一定の精度で可能であることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンザルを対象としたVT法の判別精度を向上させていくために、引き続き、群れの属性(頭数・加害性など)や分布域が異なる地域で、ニホンザルの鳴声を録音していく。VT法のさらなる高度化を目的とした今後の研究展開として、群れの属性と、鳴声の種類や頻度との関連性の検証が必要であるため、生物音響のサンプリング地域において、ニホンザルの生体捕獲を行い、GPSテレメトリの装着によって群れ識別も進めていく。 また、生物音響データから鳴声抽出時に生じうるバイアス(他の生物由来の音響、環境雑音、気象・地理条件、森林景観など)を検証するために、これまで蓄積してきたデータを活用した解析も同時に進めていく。
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