研究課題/領域番号 |
23K18538
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中村 暢文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60313293)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | イオン液体 / 下限臨界溶解温度 / ハイドロゲル / 再生可能エネルギー / 水の浄化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、『全く新しい水の精製システムを構築すること』である。水と下限臨界溶解温度(LCST)型相転移挙動を示すイオン液体ポリマーを用い、わずかな温度差を利用する水の精製装置を開発することである。水とLCST挙動を示すゲルは、LCSTよりも低温では吸水し、LCSTよりも高温では排水する。このゲルと半透膜を組み合わせて水の精製ができる。本装置のエネルギー源は、一日の気温の変化や廃熱などである。場所やサイズを選ばず、未利用の再生可能エネルギーを利用する新たな装置である。電気エネルギーなどを必要としないため、未開の場所、島しょ部や山岳地帯など、いかなる場所でも水の精製が行える。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、『全く新しい水の精製システムを構築すること』である。水と下限臨界溶解温度(LCST)型相転移挙動を示すイオン液体ポリマーを用い、わずかな温度差を利用する水の精製装置を開発することである。水とLCST挙動を示すゲルは、LCSTよりも低温では吸水し、LCSTよりも高温では排水する。このゲルと半透膜を組み合わせて水の精製ができる。本装置のエネルギー源は、一日の気温の変化や廃熱などである。場所やサイズを選ばず、未利用の再生可能エネルギーを利用する新たな装置である。電気エネルギーなどを必要としないため、未開の場所、島しょ部や山岳地帯など、いかなる場所でも水の精製が行える。 効率的な水精製装置を作製するための検討項目は、(i) より多くの水を吸排水できるゲルの開発、(ii) LCS Tのコントロール、(iii) 容器の形状の最適化、である。 ホスホニウム系のポリイオン液体(poly(IL))ゲルが、多くの水を吸排水できることがわかっていた。ただし、ホスホニウム系のpoly(IL)は合成の際に注意を要することと、コストの問題から、アンモニウム系での検討を行うこととした。 本年度の研究により、アルキル鎖長4の炭化水素鎖が4つ導入されたアンモニウムカチオンを持ち、アニオンにはアルキル鎖長6のスルホン酸を持つイオン液体([N4][C6])がLCST挙動を示すことがわかり、重合基を導入後、ゲル化したpoly([N4][C6])ゲルのLCSTは29℃であり、自重の44倍の水の吸脱着が可能であることを見出した。カチオンやアニオンの炭素鎖長を変えることによりLCSTを調整することが可能であり、それらのモノマーを異なる比率で共重合することにより、LCSTを更に精密に制御できるpoly(IL)ゲルの作製にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ホスホニウム系のpoly(IL)ゲルからスタートし、次年度にアンモニウム系についての検討を行う予定であったが、アンモニウム系の方が合成やコストの面で有意であることが明らかであったことから、アンモニウム系で試してみることとしたことが功を奏した。ホスホニウム系で達成されていたことがアンモニウム系で達成できるかどうかは、ある程度は予想できるものの、やはり実際に試みてみないとわからないところが挑戦的な部分であった。前倒しで検討してみて成功したことから、当初の計画より進んでいると言えるが、ホスホニウム系で検討予定であったゲルの力学強度などのデータの取得はこれからであり、トータルして概ね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらにゲルの探索の幅を広げる。アニオン種およびカチオン種に重合基を導入したものについてもゲル化を試み、これまで既に報告されているものも含め、様々なポリイオン液体ゲルの中で、今回のシステムに最適な条件を洗い出し、整理する。それぞれのゲルについてモノマーの混合条件でLCSTに与える影響も調べる。 昨年度に得られたゲルについての力学強度の測定や、モノマーの共重合度合いによる力学強度の違いについても検討を行う。 さらに、力学強度を保ちつつ、より多くの水の吸脱着が行える方策として、ナノ構造をゲル内部に構成する検討も行う。これまで報告されている唯一の温度応答性ハイドロゲルであるPNIPAMゲルは力学的強度が低く、多くの水を吸脱着できないという課題があったが、ナノ構造をゲル内部に形成させることで、力学的強度を向上させ、さらに水吸脱着量を増加させることが可能であるとの研究結果が報告されている。本研究で用いているpoly(IL)ゲルはナノ構造を導入せずともナノ構造を導入したPNIPAMゲルと同等の性能を有しているため、このpoly(IL)ゲルへのナノ構造の導入により、飛躍的な性能の向上が見込める。 また、汚染物質を取り除くための吸着材の検討についても検討を開始する。ポリドーパミン(PDA)は様々な汚染物質を吸着する。また、黒色であり、太陽光を吸収して熱を発生することから、今回のシステムで用いるのに最適であると考えられる。さらに複数の高分子材料を組み合わせることで多様な汚染物質に対し吸着能力を有する水浄化材料を作製できるものと考えられ、PDAとともに複数の吸着剤を付加することで多様な汚染物質を処理できる水浄化材料を作製する。
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