研究課題/領域番号 |
23K18553
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
細野 高史 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70432169)
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研究分担者 |
中武 靖仁 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30280481)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | カーバイド / 炭化カルシウム / バイオコークス / バイオマス / 木質バイオマス / 草木系バイオマス / カーボンニュートラル / 脱炭素 / アセチレン / リサイクル |
研究開始時の研究の概要 |
現在、石炭と石灰岩を原材料として合成されているアセチレンを、木質バイオマスとアセチレン発生時に排出される汚泥から再生した石灰により合成する。 研究内容は木質バイオマスから得られるバイオコークスを木炭のように乾留して導電性を持たせ、放電電極として利用し反応に必要な高温を得ること、再生した石灰をバイオコークスの材料と混合して複合化バイオコークスとすることである。 アセチレンは化学製品の原料として重要なため、この研究は化学製品のカーボンニュートラルに繋がる。
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研究実績の概要 |
本研究は草木系バイオマスおよびリサイクルされた石灰からアセチレンを合成することを目標としているが、そのプロセスは①バイオマスから石灰と複合化したバイオコークスを作ること②バイオコークスを乾留し白炭化すること③複合化白炭化バイオコークスを加熱しカーバイドを合成すること④カーバイドを水と反応させアセチレンを発生させ、同時に廃石灰を得ること、に分かれている。 そのうち③に関し、白炭化バイオコークスと試薬CaOを用い、カーバイドの合成試験を実施した。研究協力者から提供された白炭化バイオコークスおよび試薬CaOを粉砕・混合して昇温し、生成物ができることを確認した。この白炭化バイオコークスには電気伝導性がありアーク放電の電極として使用できることが明らかになっているため、カーバイドの原料であるバイオコークス自体を電極とし、放電による熱でカーバイドを合成できると期待される。 その際用いる白炭化バイオコークスとして、石灰を複合化したバイオコークスを乾留したものを用いれば放電により直ちにカーバイドが得られると考えられるため、①に関連して石灰複合化バイオコークスの試作も行った。杉材を中心とする複数種類の木質バイオマスを粉砕し、水酸化カルシウムCa(OH)2と混合(カーバイド合成に必要なのはCaOであるが、バイオコークスの固化にはバイオマスに10%前後の水分があることが必須であるため、脱水作用のないCa(OH)2を使用している)して圧縮加熱したところほとんど任意の混合割合で固化できることが明らかになった。石灰が90%を占めるような混合割合でも固化し、このときバイオマス中のリグニン等の軟化および硬化や架橋が主体で固化したのかCaO同士の結合が主体で固化したのかは明らかでないが、今後、乾留に耐えて形状を維持しさえすればいずれの場合も実用上の問題はなく、今後、乾留の試験を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
バイオコークス製造装置にトラブルが生じ、昇温ができない事態が継続していた。原因が明らかにならず加熱炉を注文製作したために実験に時間がかかった。 カーバイド合成を試みる際にバイオマス由来の炭素と混合することを避けるためタングステンを用いた実験をしていたが、ガスなどで冷却をしないと予想以上に溶融や酸化が起き、現段階では原料が粉体であるため吹き飛ばさないように実験することができなかった。やむを得ず黒鉛製のものを使用したため、炭素源が100%バイオマス由来であると言い切れない現状である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、白炭化バイオコークスは研究協力者から提供されており数量が限られているため、乾留用設備を導入し継続的にバイオコークスの乾留ができるようにする。試作できる白炭化バイオコークスの量が増えればそれを原料に実験環境を構成し、市販黒鉛が原材料に混入する恐れのない実験をする。 また白炭化ができるようになれば複合化バイオコークスの白炭化もまた可能と考えられるが、バイオマスからの揮発性成分などの離脱とCa(OH)2からの脱水が起きる複雑な過程を経る上、急激な成分の離脱はバイオコークスの崩壊につながると予想されることから、それに先立ち示差熱天秤により加熱時の挙動を明らかにする。複合化バイオコークスを崩壊させず乾留することが達成できない場合には、複合化していないバイオコークスを乾留し、別に固化成形したCaOと反応させることも試みる。 計画では複合化バイオコークスにはアセチレン発生に伴い排出されるカーバイド滓を用いることを検討していたが、石炭コークスから得られたカーバイド滓には石炭由来の刺激性の成分が含まれることから輸送が困難で、またこの成分はアセチレンに硫化物など有害な成分を混入させることも考えられる。そのため実際のカーバイド滓を水平リサイクルするのではなく、バイオマス由来のカーバイド滓の成分分析を行い石炭コークス由来のものとの比較をする。アセチレン中の不純物の分析と併せ、ガスや滓の後処理の必要性の差を明らかにしていく。 このようにカーバイド滓を複合化バイオコークスの原料とすることを想定し、水分を加え泥状としたCa(OH)2を用いた複合化バイオコークスの試作を試みる。バイオコークスの固化には適切な水分量の範囲があるため混合後、圧縮前に加熱乾燥させたり、シリンダに装てんした状態で加圧して水分を絞り、水分量を調整する。
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