研究課題/領域番号 |
23K18564
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
安田 隆 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (80270883)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 半導体加工 / 多孔膜 / マイクロ流路 / 脳オルガノイド |
研究開始時の研究の概要 |
半導体加工技術による微小空間制御を駆使して、ニューロン、アストロサイト、血管の3層から構成される階層構造をデバイス上に再現し、生体内の神経系が有する高次機能を発現し得る脳オルガノイドを構築する。本研究は、従来法では困難であった脳組織の階層構造と血管構造を脳オルガノイドに導入する挑戦的なテーマであり、脳オルガノイドの高機能化を実現し、難治神経疾患の発症機構解明と治療薬開発に大きく寄与するものである。
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研究実績の概要 |
半導体加工技術を用いて、厚さ約300μmのシリコン製フレームで保持した厚さ約1μmの窒化ケイ素(SiN, silicon nitride)製の自立膜を製作し、膜に直径約3μmの多数の微小貫通孔をアレイ状に形成した。このSiN多孔膜上にニューロン、アストロサイト、血管内皮細胞を安定して接着させるために、真空紫外光照射または酸素プラズマ処理を施し、PDL(ポリ-D-リシン)の静電的結合またはシランカップリング剤処理によるアミノ基修飾を行った後に、グルタルアルデヒドを介して、ニューロンまたはアストロサイトの接着用にラミニンを、血管内皮細胞の接着用にコラーゲンIV及びフィブロネクチンをそれぞれ固定した。このような表面修飾を施したSiN多孔膜表面に、マウス海馬から採取したニューロン、ヒトiPS細胞から分化誘導して作製したグルタミン酸作動性ニューロン、マウス大脳皮質から採取したアストロサイト、ラット脳から採取した血管内皮細胞を播種し、いずれも安定して培養できることを確認した。また、SiN多孔膜を挟むようにして、ニューロンとアストロサイトを極めて近接させて共培養し、免疫染色によりニューロンの生理活性を評価することで、微小孔アレイを通じて良好な細胞間コミュニケーションが実現されることを確認した。さらに、ソフトリソグラフィによりPDMS製のマイクロ流路を製作し、マイクロ流路内に脳血管内皮細胞を培養し、培養液を灌流することで血流を模擬した実験系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間中の研究実施計画のうち、最終的に研究の目的を達成し得るのに必要な培養膜の製作方法、培養膜の表面修飾方法、マイクロ流路による灌流培養方法などの基盤的な技術を構築することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
半導体加工技術を用いて、2枚のSiN製多孔膜を近接させて配置し、階層型培養組織の形成に必要な微小空間を制御する技術を構築する。この2枚の多孔膜のうち1枚の両面に、ヒトiPS細胞由来のニューロンとアストロサイトを共培養する。この際に、微小孔を通じた両細胞からの液性因子の伝達、及び微小孔を通じた両細胞の線維の物理的結合などにより、良好な細胞間コミュニケーションが実現され、生体内と同様にアストロサイトからニューロンへの栄養分供給とニューロン間のシナプス伝達の調整が期待できる。さらに、もう1枚の多孔膜両面にペリサイトと血管内皮細胞を培養し、血管壁の構造を再現する。この実現のために、多孔膜表面への細胞接着タンパク質の修飾方法や細胞の培養手順などについて検討を行う。以上のように各々の多孔膜における培養条件を導出した後に、この2枚の多孔膜を近接させて配置することで、ニューロン層、アストロサイト層、血管層が結合した階層構造を構築する。免疫染色などにより各細胞層の機能評価を行いながら、2枚の多孔膜を近接配置するタイミング、近接配置後の培養環境維持の方法などについて詳細な検討を行う。さらに、血管内皮細胞を培養する多孔膜面にマイクロ流路を配置して培養液を灌流し、細胞の形態や機能に及ぼす影響を評価する。
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