研究課題/領域番号 |
23K18571
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武居 昌宏 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (90277385)
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研究分担者 |
川嶋 大介 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (10813785)
小笠原 諭 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (30546685)
村田 武士 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80415322)
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研究期間 (年度) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 電気インピーダンス・トモグラフィ / 単細胞可視化 / 薬剤反応評価 / イオンチャンネル活性評価 / イオン濃度可視化 / イオンチャネル / 異方性 / 細胞イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
「電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)可視化法」を、「ラベルフリー・イオンチャネル異方性4Dセンシング技術」に展開することで、革新的な細胞センシング工学の学術・技術開拓を行う。同心多電極型EITセンサによる単一細胞の高空間解像度でトモグラフィック計測するラベルフリー・イオンチャネル異方性4Dセンシングシステムの開発およびイオンチャネルをターゲットとした薬剤反応4D検出への適用を検討する。熱流体工学および電気計測技術と、細胞生物学とを融合させた研究開発により、従来の創薬学や細胞生物学に革新をもたらし、イオンチャネル拮抗薬などの新規創薬の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
これまで、センシングシステムの開発と薬剤反応に関する理論の構築とその細胞計測、イオンチャンネル活性評価、および薬剤反応に関す研究を行ってきた。その内容は、(1)細胞外電圧活性化に基づく非侵襲性電位依存性イオンチャネルスクリーニングシステムの開発、および薬剤反応評価、(2)単細胞スケール可視化ためのマイクロ電気インピーダンス・トモグラフィセンサー(μ-EIT sensor)の開発と細胞の計測。 (1)に関して、細胞膜に電圧を印加しながら電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)計測が可能なPCBセンサーを開発した。細胞膜に電圧を印加すると、hERGチャンネル(電位依存性イオンチャネル)が開き、イオン輸送によって細胞外のイオン濃度が増加する。EIT計測によって導電率分布を再構成することで、細胞外イオン濃度の増加からイオンチャンネルの活性評価を達成した「国際会議-1」。また、hERGチャンネルの阻害薬のIC50(半数阻害濃度)を計測することで、薬剤反応の評価も行った「国際会議-2」。 (2)に関して、8個電極を持つ直径50μmのμ-EIT sensorを開発し、単細胞の可視化を行った。多周波数EITを使用して、単細胞の導電率分布を可視化することで、細胞質と細胞核のタンパク質発現の違いによる細胞種の識別を達成した「国内会議-5」。更に、複素の感度行列を使用したEITの開発により、単細胞の導電率と誘電率分布を同時に可視化することができた「国内会議-7」。 従来に、イオンチャンネルの薬剤反応と単細胞の可視化には、コストが高く侵襲性のある方法(パッチクランプ法、染色法)を使用している。しかし、本研究の革新的な方法を利用することで、非侵襲的なイオンチャンネル活性評価、医薬品開発の効率化、および細胞内情報可視化により、創薬、再生医療、細胞生物学などの分野の発展に大きく貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度には、センシングシステムの開発に加えて、等方性イオンチャネルの薬剤反応評価も行った。この内容は、令和6年度の目標である「2-①4Dイオン濃度異方性実験」の一部となる。具体的には「カリウムチャネル(hERG)が過剰に発現したHEK 293細胞を使用とイオンチャネル拮抗薬を部分的に投与」である。このため、計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、等方性イオンチャネルの薬剤反応評価と単細胞の可視化を行ってきた。これらの研究成果を基盤として、(1)薬剤投与後の導電率分布変化に基づいて、単一細胞スケールで異方性イオンチャネルの薬剤反応を評価する、(2)ネルンスト・プランクの流束方程式に基づいて、イオン輸送モデルを構築し、膜透過率テンソルPを用いて異方性を高精度に評価する、と(3)EIT計測で得られた結果の検証実験として、従来法(蛍光染色、クライオ電子顕微鏡)での検証実験を行う。 (1)を実現するために、μ-EIT sensorを改良する。薬剤投与時の細胞制御性を向上させるために、μ-EITセンサーに流路を設ける。EIT画像解像度を向上させるために、電極数を16個に増加する。EITで計測する際に、顕微鏡での蛍光検証実験との同時に実施を可能にするために、センサー構造を設計変更する。 (2)を実現するため、ネルンスト・プランクの流束方程式を用いて、膜透過の電位勾配依存と濃度勾配依存の二種類の流束を考慮したイオン輸送モデルを構築する。EITで得られた導電率分布変化をモデルに導入し、流束計算を可能にする。モデルパラメータを最適化し、流束から膜透過率テンソルPを推定する。膜透過率テンソルPに基づいて、異方性比率(FA)を開発し、イオンチャネルにおける異方性特性を比較分析と評価する。 EIT計測で得られた結果((1)と(2))の検証のため、従来法である蛍光染色法とクライオ電子顕微鏡法を用いて、EIT計測と同じ条件下で実験を行う。蛍光染色法は細胞スケールで細胞周囲のイオン濃度分布を計測し、EIT計測で得られた導電率分布を検証する。クライオ電子顕微鏡法はイオンチャネルスケールで細胞膜の異なる部位におけるイオンチャネルタンパク質を観察し、イオンチャネル活性の異方性とEIT計測で得られた導電率分布の異方性が一致することを確認する。
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