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ゲノム編集を標的とした革新的抗ウイルス・抗ガン戦略の構築

研究課題

研究課題/領域番号 23K18589
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分90:人間医工学およびその関連分野
研究機関神戸大学

研究代表者

有井 潤  神戸大学, 医学研究科, 特命准教授 (30704928)

研究期間 (年度) 2023-06-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
キーワードAPOBEC3 / 抗ウイルス因子 / 変異 / ヘルペスウイルス
研究開始時の研究の概要

APOBEC3(A3)は、ウイルスゲノムに変異を導入する抗ウイルス因子であると同時に、ガン細胞における変異源でもある。現在、A3を阻害または活性化する方法は確立していない。。本研究では、さまざまなA3の阻害能のあるウイルス因子に注目し、タンパク質の改変を行うことで、A3の抗ウイルス能上昇を目指す。さらに本研究が注目するウイルス因子は、抗ガン戦略を目指したA3の阻害方法の確立のためのプラットフォームとして有望である。すなわち本研究は、広い範囲での抗ウイルス・抗ガン戦略構築の基盤となる、挑戦的でユニークな萌芽研究であるといえる。

研究実績の概要

APOBEC3(A3)は、ウイルスゲノムに変異を導入する抗ウイルス因子であると同時に、ガン細胞における変異源でもある。現在、A3を阻害または活性化する方法は確立しておらず、実際にA3が治療標的となりうるのかを含めて今後の研究が待たれる。ヒトがコードするA3遺伝子は7種存在し、発現部位や指向性に違いが認められている。ガン細胞への変異導入の主体となっているのは、核内に存在するA3AおよびA3Bである。
ヘルペスウイルスは、核内でゲノム複製を行うDNAウイルスであり、ヒトに多彩な疾患を引き起こす。ヘルペスウイルスが安定的に子孫を産生するためには、核内のA3から免れる必要がある。実際にヘルペスウイルスの一種であるEBVでは、ウイルスがコードするBORF2というタンパク質がA3AおよびA3Bを細胞質に排除することが知られている。一方で、このタンパク質だけでは説明不可能なことも多く、ヘルペスウイルスがどのように核内のA3から逃れているのか、その詳細は不明である。
本研究では、さまざまなA3の阻害能のあるウイルス因子に注目し、抗ウイルス能または腫瘍悪性化阻害能のT細胞への付与を目指す。本年度は、ヒトヘルペスウイルスがコードするタンパク質VPa(仮称、未発表)が、複数のヒトA3を細胞質内に蓄積させ、分解することを新たに見出した。VPaの阻害は、感染細胞におけるA3の分解を解除し、ウイルスゲノムに対する変異導入を亢進させた。
本研究は、難治性DNAウイルスに対する発症阻止法の確立および革新的ガン治療法の構築に貢献すると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

我々は、ヒトヘルペスウイルスがコードするタンパク質VPa(仮称、未発表)が、複数のヒトA3を細胞質内に蓄積させ、分解することを新たに見出した。興味深いことに、VPaが阻害するA3の種類および阻害方法は、これまで知られてきたいかなるウイルス因子とも異なっていた。また、VPaの阻害は、感染細胞におけるA3の分解を解除し、ウイルスゲノムに対する変異導入を亢進させた。VPaによるA3阻害の機序を明らかにし、抗ウイルスおよび抗腫瘍戦略構築に貢献するために、VPaの発現系の確立を行った。現在のところ安定的に大腸菌内で大量発現することには成功していないが、哺乳類細胞での発現を得ることが可能であった。すなわち、A3阻害の詳細な機序の解明を進める体制が整ったと考えられる。また、培養細胞におけるVPaの発現は、A3感受性の高いウイルスのゲノム変異率を低下させた。

今後の研究の推進方策

ひきつづきヘルペスウイルスタンパク質VPaの精製を試み、in vitroでのA3結合能や、A3酵素反応への阻害能を解析する。VPaを各種の細胞に発現させ、A3によるゲノム変異率やウイルス感染への抵抗性を解析する。またVPaは、すべてのヘルペスウイルスに保存された因子である。複数の種類のウイルス由来のVPaのA3阻害能を解析する。そして活性の弱いものと強いものとの間のキメラを作成することで、VPaにおけるA3認識に重要なアミノ酸を同定する。同様にVPa抵抗性のA3を作出し、抗ウイルス活性を明らかにする。またヘルペスウイルス感染症患者由来の試料におけるウイルスゲノムの恒常性を解析し、VPaなどのヘルペスウイルス因子と宿主抗ウイルス因子であるA3との攻防を明らかにする予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Texas Health San Antonio(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ESCRT-III-dependent and -independent egress of herpesviruses2024

    • 著者名/発表者名
      J. Arii.
    • 雑誌名

      Front Virol.

      巻: 2024. ページ: 1378054-1378054

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Human herpesvirus 6A nuclear matrix protein U37 interacts with heat shock transcription factor 1 and activates the heat shock response.2023

    • 著者名/発表者名
      J. Huang, J. Arii+, M. Hirai, M. Nishimura and Y. Mori.
    • 雑誌名

      J Virol.

      巻: 97 号: 9

    • DOI

      10.1128/jvi.00718-23

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 「ウイルス粒子形成の足場としての脂質の機能」2023

    • 著者名/発表者名
      有井 潤
    • 学会等名
      第65回日本脂質生化学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「ウイルス粒子形成に伴うオルガネラの再構築」2023

    • 著者名/発表者名
      有井 潤
    • 学会等名
      第75回細胞生物学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「APOBEC3からの回避は、human herpesvirus 6の増殖に重要である」2023

    • 著者名/発表者名
      有井 潤
    • 学会等名
      第17 回 ウイルス学キャンプin 湯河原
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「APOBEC3からの回避は、human herpesvirus 6の増殖に重要である」2023

    • 著者名/発表者名
      有井 潤
    • 学会等名
      第36回ヘルペスウイルス研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 「Human herpesvirus 6A NEC protein U37 interacts heat shock transcription factor 1 and activates heat shock response」2023

    • 著者名/発表者名
      Jing Rin Huang、有井 潤、平居万作、西村光広、森康子
    • 学会等名
      第36回ヘルペスウイルス研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] APOBEC3 shapes pathogenesis and prevalence of human T lymphotropic herpesviruses 6A and B2023

    • 著者名/発表者名
      J. Arii, S. Aktar, J. Huang, M. Hirai, Y. Gu, B. Wang, S. Nagamata, M. Nishimura, R. Harris and Yasuko Mori
    • 学会等名
      47th ANNUAL INTERNATIONAL HERPESVIRUS WORKSHOP.
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Human herpesvirus 6Bは、さまざまなAPOBEC3を阻害することで、ウイルスゲノムを維持する」2023

    • 著者名/発表者名
      有井潤、Salma Aktar、Jing Rin Huang、平居万作、Yujie Gu、Bochao Wang、長又哲史、西村光広、Reuben S. Harris、森康子
    • 学会等名
      第70回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Human herpesvirus 6AがコードするNEC構成因子U37は、heat shock responseを活性化しウイルスタンパク質の蓄積と粒子形成を促進する2023

    • 著者名/発表者名
      平居万作, 有井 潤, Jing Rin Huang, 西村光広, 森康子
    • 学会等名
      第70回日本ウイルス学会学術集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 抗ウイルス因子APOBEC3とヘルペスウイルスとの攻防2023

    • 著者名/発表者名
      有井 潤
    • 学会等名
      東京大学・医科学研究所・学友会セミナー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      https://www.med.kobe-u.ac.jp/virol/index.html

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-07-04   更新日: 2024-12-25  

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