難民問題の様態の多様化に伴い、難民・強制移動研究は多角的な学際研究が必要とされ、特に政治状況の変容に応じた思想的分析が求められている。ハンナ・アーレントは自身も難民となりながら難民問題を論じた。彼女の思想は現在の広義の難民をめぐり再び注目されている。だが、アーレントの難民論には現代までの難民問題の変容を反映させた包括的な分析はない。そこで本研究は、難民をめぐりアーレント思想を受容した現代の難民論、特にセイラ・ベンハビブとジュディス・バトラーの議論を分析・整理し、その論点を体 系化する。これにより難民・国民の対等かつ友好的関係性をめぐる思考モデルの構築を目指し、多様化する難民問題の解決に資する。
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