研究課題/領域番号 |
23K18601
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
押谷 健 東京大学, 社会科学研究所, 特任研究員 (80982561)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 契約主義 / スキャンロン / 共同行為 / 非帰結主義 / 共同行為論 / 関係論 / T.M.スキャンロン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、非帰結主義的な規範理論としての契約主義倫理学を、「関係性」概念の精緻化を通じて発展・洗練させることである。非帰結主義とは、帰結の善さに還元されえない考慮事項に規範的な重要性を認める立場である。そのなかでも、互いに対して正当化を負いあう理由応答的な人格間の関係性に訴えて道徳的責務を説明する契約主義倫理学が近年、注目を集めている。しかし契約主義には、理論の中核をなす「正当化を負いあう関係性」の概念が不明瞭であるという問題が指摘されている。そこで本研究では、共同行為論の観点から関係性の概念を明晰化することで、契約主義倫理学を理論的にも実践的にも強固な理論として再構成することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、共同行為の哲学の知見を活用することで、功利主義などの帰結主義に代わりうる有力な倫理学上のアプローチとして注目を集めている契約主義の難点を克服し、より理論的に洗練された契約主義的道徳理論を構築することにある。具体的には、(1)共同行為の哲学における主要な文献をサーベイし、(2)それらの知見を取り込むことで、従来の契約主義の難点を修正した独自の契約主義の構想を提示し、(3)その結果として得られたより理論的に洗練された契約主義の観点から、現実の具体的な倫理的課題を考察する、という手順を取る。初年度となる本年度では、主に(1)と(2)の課題(共同行為論の知見を踏まえた独自の契約主義の構築)に取り組んだが、同時に(3)の課題(契約主義のアプローチの現実の倫理的課題への応用)についても部分的な成果を得ることができた。
まず、共同行為論の知見を組み込んだ独自の契約主義の構築という課題については、関連する文献のサーベイと検討を完了させ、考察の成果を投稿論文としてまとめることができた。こうした研究の成果の一部は、宇野重規・加藤晋編『政治哲学者は何を考えているか』所収の論考において公表している。さらに、この課題に関連するその他の研究成果についても、次年度において随時、国際学会や国際学術誌を通じて公表する予定である。
また、契約主義のアプローチの現実の倫理的課題への応用可能性の検討という課題についても、一定の成果を得ることができた。とくに本年度では、帰結主義のアプローチと、契約主義を含む非帰結主義的アプローチが、具体的な倫理的・社会的な課題に対してそれぞれどのような含意を導きうるかを検討した。こうした検討の成果の一部は、Journal of Medical Ethicsに掲載の論文(加藤晋氏との共著)を通じて公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画において、本研究の初年度となる本年度では、「研究実績の概要」で述べた(1)および(2)の課題を中心に取り組む予定であったが、これらの課題については一定程度の成果を得ることができた。とくに、共同行為の哲学の分野における関連文献のサーベイと精読、および原稿の構想と執筆に関して、おおむね予定通りに進めることができた。さらに、初年度のうちに研究の成果を複数の論文原稿としてまとめ、その一部については、国際学会や国際学術誌において公表することができたのは、当初の予定以上の成果であったといえる。他方、本研究の核心部分にあたる「共同行為の哲学を組み込んだ独自の契約主義の構築」という課題については、論文として公表するに至っていないため、次年度の課題として残っている。以上の理由から、本研究の進捗状況については、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の方向性について大きく修正する必要は生じなかったため、次年度では、引き続き当初の計画通りに研究を進める予定である。具体的には、初年度における関連文献の読解と考察の成果について、論文のかたちにまとめ、査読付き国際学術誌および国際学会などを中心に公表することに注力する。とくに、本研究にとってもっとも重要な課題である「共同行為の哲学の知見を組み込んだ独自の契約主義の構築」に関連する論文を、有力な国際誌において掲載することを目指す。また上記に加えて、次年度では、「研究実績の概要」で述べた(3)の課題である、本研究が提示する独自の契約主義の構想の現実における社会的・倫理的な課題に対する含意について検討し、その成果を論文として公表する予定である。
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