研究課題/領域番号 |
23K18612
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長島 祐基 早稲田大学, 社会科学総合学術院(先端社会科学研究所), 助教 (20979364)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 相互交流 / 演劇運動 / 戯曲 / 芸術実践 / 演劇 / 文化運動 / 戦後史 / 労働組合 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は敗戦~高度成長期の労働者の文化運動に着目し、政治の季節とされる同時期の人々の政治意識が作りだされる過程を明らかにする。これまで研究蓄積が薄かった労働者の演劇運動に着目することで、既存の文化運動研究とは異なる人々の政治意識形成のプロセスを明らかにする。これまでは大阪に着目して研究を進めて来たが、今後は大阪以外の地域へと対象を広げることで運動の広がりや地域間の差異を明らかにしていく。補助事業期間ではそのための基盤となる調査を進める。
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研究実績の概要 |
2023年度は科研費の初年度という事もあり、本研究費を用いた研究業績は2023年11月に開催された東アジア日本研究者協議会第7回国際学術大会での報告「戦後労働者の演劇運動にみる作品のテーマの広がりと相互交流―大阪の演劇運動を中心として―」のみである。同報告では本研究課題の内、以下の三点について考察を深めた。 (1)本研究では分析枠組みとして演技、戯曲のテーマ、観客の評価の相互関係を動態的に捉える事を掲げている。本報告ではこれまで中心的に扱って来た、ホワイトカラー労働者が職場の問題を扱った戯曲を上演した際の三者の相互関係ではなく、部落問題や在日朝鮮人問題を扱った戯曲を対象とすることで、三者の相互関係をより多角的に検討した。分析を通じて職場の問題を扱った際の三者の相互関係との差異を明らかにした。 (2)本研究は演劇運動の分析対象を1960年代以降に複数の職場の労働者が合同して結成された劇団などへ広げることを掲げている。それは、一つの労働組合を基盤とする演劇運動とは異なる活動の特質(作品創造の背景)や上演されたテーマの特徴を明らかにするものである。本報告ではその一つの対象である劇団未来にスポットを当て、その初期の活動について資料調査の結果をもとに報告を行った。 (3)本研究はこれまで扱って来た大阪の演劇運動の成果を踏まえつつ、対象を東京や名古屋に拡大することを掲げている。劇団未来は1960年代初頭に東京での移動公演を実施しており、その際は東京と大阪で観客の評価にも差異があった。本報告ではそうした差異が生れる背景として東京と大阪の演劇運動の差異や地域的な差異に言及することで、今後東京の演劇運動を対象として研究する際のヒントを導き出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は研究計画書に記した調査地、及び資料の中から2023年11月に広島県立文書館での資料調査を、2024年3月に関西学院大学博物館と大阪産業労働資料館エル・ライブラリーでの資料調査を実施した。他にも、2023年10月~2024年1月にかけて「プランゲ文庫」内の演劇運動の資料調査を行った。2023年度は主に資料調査に重点を置いた研究計画を立てており、資料調査については比較的順調に推移していると考えている。関西学院大学博物館で閲覧した資料は2024年度の学会報告の参考資料として用いる予定である。また、「プランゲ文庫」の中からは国鉄労働組合の地方機関紙などに1946~1949年頃の演劇運動に関する多数の記述がある事がわかった。資料の内容については現在エクセルで記事タイトルや号数の一覧を作成の上、内容の読解を少しづつ進めている。
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今後の研究の推進方策 |
関西学院大学博物館では東京と名古屋の演劇運動の資料(機関紙類)を閲覧した。このうち名古屋の演劇運動については本研究費獲得前から収集して来た資料(名古屋の演劇運動のパンフレット)と合せた形で2024年度中に行う学会報告で用いる予定である。同報告を通じて劇の上演と観客の共感の関係をより深められればと考えている。 東アジア日本研究者協議会での報告については、資料調査の結果をもとにした同報告を踏まえた上で2024年度中に劇団未来の関係者に聞き取りを実施する予定である。成果となる論文については現在、共著の書籍の中の一つの論文として収録していただく話があり、順調に進めば2024年度中に原稿を完成させ、2025年度以降に刊行される予定である。 「プランゲ文庫」の資料調査を通じて複写した1946~1949年頃の国鉄労働組合の演劇運動の資料は(1)ホワイトカラー労働者以外の労働者による演劇運動の特徴を明らかにする、(2)本研究でも考察課題としている、大阪以外の演劇運動の動向を考察する可能性を有している。現時点では分析がまだ進んでいない箇所や追加で収集すべき資料が多数あるが、国鉄労働組合の演劇運動に関する研究は将来的に演劇運動の全国的な広がりや地域間比較を実施する上での一つの基盤になると考えている。
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