イタリア出身の政治思想家であるアントニオ・ネグリは、平等で自由な社会の実現において大衆運動が果たす役割、またそれが採るべき戦略を問うてきた。この問いを一国社会という文脈にとどまらずグローバルな政治・経済秩序に展開した『〈帝国〉』(マイケル・ハートとの共著)は政治思想史にネグリがもたらした最大の貢献である。ネグリの思想はオペライズモ(労働者主義)という思想潮流の中で形成されたが、この潮流は多様な理論的内容を含んでおり、ネグリの独自性はオペライズモのその他の論者たちから分化する過程で現れてきた。本研究は、このネグリの思想の生成過程を歴史的に解明し、その政治思想史的意義を標定することを目的とする。
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