研究課題/領域番号 |
23K18639
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0101:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 舜 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (80984707)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 西田幾多郎 / 田辺元 / 数理哲学 / 認識論 / 論理主義 |
研究開始時の研究の概要 |
近代日本哲学を代表する西田幾多郎(1870-1945)と田辺元(1885-1962)は、宗教や東洋を中心に多様な観点から検討がなされてきた。しかし、その学問的基盤を考える上で重要な「論理」や「数学」といった側面からの検討は未だ十分ではない。本研究は、(1)西田と田辺のとりわけ初期の数学的関心を源泉に立ち返ってその内実を明晰に整理すること、(2)それが彼らの哲学の論理的基盤にいかに接続されているかを見通し、暫定的な解釈を与えること、以上二点の達成を目指すものである。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績は、概ね以下の3点となる。 (1)西田、田辺の数理哲学の重要基盤である新カント派の論理主義的影響力を、当時の日本哲学全体を視野に入れる仕方で明らかにした。新カント派は従来十分な考察がなされておらず、その影響力に関しても消極的な評価が多かったが、近代日本哲学の論理主義的側面を解明する上では新カント派の参照が不可欠であるほどに重要であることを明らかにした。本成果は、2024年度内に刊行予定の新カント派に関する入門書の一部で公にする予定がある。また、その原稿の検討会において、新カント派の重要性を認識する哲学者、社会学者、文学者など多分野の研究者と交流の機会を得て、新カント派という共有の困難な主題に関して意見交換ができるコミュニティの充実を図ることができた。 (2)西田哲学の論理の解明にあたって、「自覚」概念の脱心理主義的な理解を試みた。その際に「自覚」に内在する論理的契機を概念的に分析することで、「自覚」の意義と問題を明晰に説明することができると考えた。本成果は雑誌の公募論文として投稿し、査読において説明上の多くの課題を生じたため、一旦取り下げて別媒体への再投稿を予定している。 (3)初期田辺を主に数理哲学的な観点から特徴づけ、当時の西田との関係においてどのような点に有効性や際立った差異があるのかという問題を、国際的に共有する意図をもって明確に整理した。本成果は、海外の出版社から出版予定の研究書に英語論文として掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
それなりの成果はあったものの、あくまで当初の計画に照らして見たときには、若干の進捗の遅れが感じられる。現研究機関に着任し、初年度の教育活動や校務に想定以上に多くの時間を取られたことが大きな要因である。ただ、年度を跨ぐことでそうした側面の一部はクリアしつつあり、これまで研究自体の滞りはあったものの、その分で研究環境の整備等の充足を図ることができたため、今後は研究の進捗を回復することができる見込みである。また、業績に至る段階にまで研究成果を十分紙面に反映できていない点も、今回の進捗状況の判断要因に含まれるが、研究自体は当初のものも含め少しずつ進展はしており、今後はその公開が課題だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
西田、田辺ともにその哲学の論理の形成に関して、ある程度の見通しはあるものの、十分に紙面に反映できていないという実際上の問題がある。とりわけ田辺の哲学の論理である「絶対媒介の論理」をそれ以前の認識批判との関係性を扱いつつまとめ上げることが、当初から予定していた2024年度の研究計画でもあるという意味で、今後着手していくべき課題である。
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