研究課題/領域番号 |
23K18647
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹山 啓 富山大学, 学術研究部教養教育学系, 講師 (90975658)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ロシア / ソ連 / ナショナリズム / ドゥーギン / ゴリチェヴァ / 非公式文化 / 右派思想 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で主に扱うのはユーリー・マムレーエフ、タチヤナ・ゴリチェヴァ、アレクサンドル・ドゥーギンという3名のロシアの保守思想家である。彼らは西欧中心の歴史観を問い直すポストモダン的世界観の伸張を奇貨として、ソ連崩壊によって痛手を受けたロシアという国家のアイデンティティの再構築を目指した。プーチン登場後のロシアにおける反リベラル・反欧米的風潮に理論的基盤を与えるこれらの人物たちの思想の読解を通じて、現代ロシア社会の実相に迫ることが本研究のねらいとなる。
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研究実績の概要 |
2023年度(研究活動スタート支援採用が10月のため、採用後の期間は2023年10月~2024年3月の6か月)には、日本ロシア文学会全国大会(10月21-22日、富山大学)において、「ロシアの右派思想家による国外の思想の読解について」と題した発表を行った。ここではロシアの右派思想家であるアレクサンドル・ドゥーギンの最初の著作である『絶対者の道』(1989)において、1920-30年代のフランスで興った保守思想「伝統主義」がどのように解釈され、現代ロシアのナショナリズムとの接点を持ったのかについて議論した。近年その強烈な保守思想が日本でも注目され始めたドゥーギンであるが、彼の思想については、ソ連末期にユーリー・マムレーエフやエヴゲーニー・ゴロヴィンといった先行世代の作家・詩人らの思想との共鳴において生まれたものであるという議論がこれまでなされてきた。本発表はこの点について、ソ連における保守系の哲学者でありフェミニストとしても著名なタチヤナ・ゴリチェヴァの著作『新しき町キーテジ』(マムレーエフとの共著)との関連を例示し、ドゥーギン解釈の新たな方向性を示した。ドゥーギン『絶対者の道』は、表面的にはロシアに関する話題がほぼ登場せず、ルネ・ゲノンによる伝統主義思想の整理・解釈に終始しているが、同時代に書かれた『新しき町キーテジ』におけるロシア正教を素地としたナショナリズム思想との著しい類縁性を見せている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載した学会発表を基に、日本ロシア文学会会誌「ロシア語ロシア文学研究」に学術論文を投稿した(現在査読中)。 2024年3月、カザフスタン共和国アルマトイに研究調査に赴き、国立図書館および書店等にて、現在絶版となっているドゥーギンの著作をはじめとするロシアのナショナリズムに関する書籍・論文等を多数収集した。 「ドストエーフスキイの会」会誌『ドストエーフスキイ広場』に、ウクライナの映画監督セルゲイ・ロズニツァによる『ジェントル・クリーチャー』の評を投稿し、掲載された(招待あり、掲載は2024年4月のため、2023年度の業績にはカウントされない)。これはドストエフスキーの短編「やさしい女」を原作にした、ロシア語圏における「権力」の問題を主題とした特筆すべき作品である。本研究課題にとり間接的にであるが関係する題材を扱った論考である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の活動予定としてまず具体的に挙げられるのは、6月28-29日に韓国・ソウルで開催されるICCEES(International Council for Central and East European Studies)アジア大会に参加し、「Reading Early Works of Alexandr Dugin」と題した発表を行う。その後、そこでの発表内容をもとに、国内もしくは国外の雑誌に学術論文を投稿する見通しを立てている。 現在ロシアへの研究目的での渡航は制限されているが、「現在までの進捗状況」に記載した通り隣国のカザフスタンにおけるロシア語資料の調査収集は可能であるため、本年度も夏期もしくは春期に資料収集に赴くことを計画している。
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