研究課題/領域番号 |
23K18665
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
川上 一 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (00984436)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 足利義政 / 足利義尚 / 室町殿 / 室町和歌 / 連歌 / 飛鳥井家 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では室町幕府八代将軍足利義政の文化事績のうち、和歌・連歌の業績に注目し、その研究基盤の構築を目指す。文人としての義政の活動歴は幼少より晩年まで、およそ半世紀にわたるが、現在こうした事績および作品を網羅的に集積した研究は存在しない。 特に連歌の事績については、資料的な限界もあり、これまで本格的な言及がなされてこなかったといえる。最近、義政の句集として肥前島原松平文庫本『愚句』が再評価され、発句集『室町殿御発句』と合わせて、義政の連歌歴の実態を詳しく検討できるようになった。 本研究ではこれら連歌資料の本文整備を主たる目的として、義政と文芸、さらには室町殿による文芸活動の史的意義を明らかにする。
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研究実績の概要 |
足利義政の文芸事績のうち、2023年度は特に「連歌」の事績に注目し、その基礎となる句集および百韻資料の蒐集・整理を行った。 義政の連歌資料については現在、①発句集『室町殿御発句』、②付句集『愚句』の二種が確認されている。これらは既に『連歌大観 第一巻』(古典ライブラリー、2016)に収録され(ただし②は飛鳥井雅親の句集として収録)、広く閲覧に供されているが、①については、底本がもつ複雑な錯簡を正さないままに翻刻がなされており、義政の連歌事績を追跡する上で大きな支障をきたしていた。このため本研究では、現存伝本を改めて調査蒐集し、本文を「巻子本系(増補本)」・「後鑑本系(初稿本)」の二種に分類したうえで、これらを対照しながら一覧することが可能な対校本文を新たに作成し、検索の便宜を図るため初句索引を付した。この成果は「新訂『室町殿御発句』―巻子本と後鑑本の対校―」として成稿し、雑誌『三田国文』第68号に掲載した。 またこれと並行して、将軍家の歌道師範をつとめた飛鳥井家の事績についても検討した。具体的には、同家に伝わる固有の歌会作法、「一首懐紙三行五字説」の発生および変遷の解明を試みた。この作法は歌会における一首懐紙の書式を通常「三行三字」に書くところ、飛鳥井家歌人のみ「三行五字」とするというものであるが、その成立や実態に関しては、資料的限界もあり、不明な点が多くのこされていた。本研究では歌会写本に残されている書式注記を利用することで、資料の欠を補い、三行五字書式は鎌倉期の当主、雅孝の時代より使用が確認できること、またこれが戦国期になって秘伝を備えた作法として喧伝されるようになる実態を明らかにした。この成果は論文「歌会作法の変遷―飛鳥井家一首懐紙三行五字説を例に―」として、『古典文学研究の対象と方法』(佐々木孝浩ほか編、花鳥社)に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
義政の文芸資料の調査・蒐集は、目下滞りなく行えており、発句集『室町殿御発句』の新たな校訂本文についても、予定より早い段階で公表することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の段階で、足利義政の連歌資料の根幹となる二種の句集(①「室町殿御発句」・②「愚句」)の基礎的整理が概ね完了した。次年度は残る百韻資料の調査検討、およびこれら資料に基づいた事績の分析が主たる課題となる。 また、義政の文藝事績が解明されていくなかで、その息義尚(九代将軍)の事績についても相対的な評価を行うことが可能になりつつある。義尚の和歌偏愛は文学史上にもつとに著名だが、その評価については実に半世紀近く更新を見ていない。こうした面についても視野を拡げ、研究課題を遂行していく。
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