研究課題/領域番号 |
23K18666
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
小泉 咲 国文学研究資料館, 情報事業センター国際連携部, 機関研究員 (80875782)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | うつほ物語 / 物語文学 / 中古文学 / 平安朝文学 / リテラシー / 平安時代 / 源氏物語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、平安時代の物語作品『うつほ物語』を通じて、平安時代のリテラシーが物語においていかに描かれているかを探究しようとするものである。本研究では、物語内における物事の伝達に対する作中人物の受け止め方の差異に注目する。そこには当時のリテラシーの問題が複雑に絡んでいるだろう。そこで、『うつほ物語』及びそれ以外の同時代の作品にも目を配りつつ、物語内に描かれる伝達行為と、平安時代当時の現実のリテラシーの状況を双方向的に考察する。本研究の探究の成果は『うつほ物語』という作品の読解に資するだけではなく、物語の表現方法、ひいては物語の作られた当時の状況を考究することに繋がる。
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研究実績の概要 |
本研究は、平安時代の物語作品『うつほ物語』を通じて、平安時代のリテラシーが物語においていかに描かれているかを探究することを目的としている。この長編物語においては様々な「伝達」が描かれ、物語展開に大きく影響する。物事の伝達が果たす役割の大きさは、先行論でも指摘されているが、伝達に対する作中人物の受け止め方の差異が描かれているという点には、検討すべき点が残っている。そこには、物語展開の都合や作中人物たちの性格付けに加えて、作中人物の性別、年齢、社会的地位、所属するコミュニティ、学識の有無等といった点に関わる、当時のリテラシーの問題が複雑に絡んでいるだろう。そこで、本研究では物語内に描かれる伝達行為と、平安時代当時の現実の状況を双方向的に考察しようとしている。 2023年度の半年間においては、目録や遺言状といった、物品の譲渡を記録する書物について検討を行った。検討の対象としたのは、主として以下の二点である。 ①『うつほ物語』後半において死去する、太政大臣源季明の処分状と、それを書きとる長男の実正 ②『うつほ物語』における主人公格の人物の一人である清原俊蔭の遺した目録と、それを受け取る孫の仲忠 特に①については、源季明一族の後継者と目される源実忠の家庭再生に対して、実正がいかに関わるのかという問題とも隣接している。この①②の伝達の模様を、平安時代当時の相続のありようと比較して類似点を見出し、その内容について口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の内容をまとめて、「『うつほ物語』における継承とその記録」という題目で口頭発表を行った(小泉咲、「『うつほ物語』における継承とその記録」、客員次席研究員報告会(早稲田大学 スーパーグローバル大学創成支援事業 国際日本学拠点)、2024年3月26日)。 『うつほ物語』でこうした伝達にかかわる物事を記録した書物を受け取る人物については、一族の「後継者」とは別に、一族の「実務家」として立ち働き、後継者への伝達を支援する姿が看守される。その様子は平安時代当時の遺産相続手続きの動きと相似する点があることを明らかにした。 ただし、この『うつほ物語』後半の内容にかかわる検討に予想より多くの時間を要したため、当初の計画として示していた『うつほ物語』前半についての検討に未だ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
上記の口頭発表の内容を論文化することを目指す。口頭発表時に受けた質問・意見等から、古代における宝物の記録、管理のあり方についても参照する必要があることが判明したため、その調査と分析を行った上で、論文としてまとめる。その上で、『うつほ物語』前半についての検討に進む。
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