研究課題/領域番号 |
23K18681
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0102:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
直江 大河 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (20982333)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 語用論 / 自閉スペクトラム症 / 心理言語学 / 実験心理学 / 認知神経科学 / 自然言語処理 / 精神疾患 / 思考障害 |
研究開始時の研究の概要 |
自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorder, ASD) 者は対人コミュニケーションにおける言語使用が非典型的であることが指摘されている。本研究では、日本語特有の言語表現である終助詞などに着目した行動実験・脳波実験を実施し、ASD者と定型発達 (typical development, TD) 者の表出言語の特徴と言語処理時の神経ネットワークを比較する。ASD者とTD者の群間差だけでなく、ASD者間やTD者間の個人差についても検討する。本研究の成果により、特性の異なる話者同士の相互理解とコミュニケーションの促進につながることが期待できる。
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研究実績の概要 |
語用論的特徴を検討する行動実験について、令和5年度のうちに自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder, ASD)者26名、定型発達(typicaly developed, TD)者8名(合計28名)のデータを取得した。語用論能力の背後にある神経メカニズムを検討するための脳波実験については、実験のセットアップを完了した。安静時脳波と言語理解をしている際の脳波計測について、TD者合計6名分のパイロット実験を実施し、ASD者1名のデータを取得した。また本研究に関連する、TD者の音声単語理解について検討した脳波実験の論文を執筆し、国際学術誌に投稿した。 日本語日常会話コーパスのデータについて自然言語処理を用いた解析を行い、言語情報に含まれる感情情報がどのようにやり取りされているのかを定量的に評価することができた。本成果を筆頭著者としてまとめ、国際シンポジウムで発表した。 昭和大学精神科医や東京大学、東京医科歯科大学との共同研究で、大規模言語モデル(large language model, LLM)のハイパラメータを操作するとヒトの精神疾患患者のような言語出力をみせるかどうかを検討する研究を実施した。LLMへの刈り込みや温度の操作により、統合失調症患者の思考障害様の言語出力をみせることを明らかにした。また、パラメータ操作の方法によっては語用論障害様や失語症様の言語出力が観察されるなど、 精神疾患とヒト言語、脳との関係に重要な示唆を得る結果だった。本成果を筆頭著者としてまとめて言語処理学会年第30回年次大会で発表し、委員特別賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
TD者ASD者を対象とした行動実験については当初の計画通り30名のデータ取得を完了し、TD者についても概ね計画通りのデータを完了した。脳波実験については計画では令和6年度から実験開始予定だったが、令和5年度のうちにセットアップを開始して既にデータ取得を開始している。さらに、自然言語処理の技術や大規模言語モデルを用いた言語データの解析を行い、国内学会1件と国際シンポジウム1件、国内シンポジウム1件のポスター発表を実施した。当初の計画より早い進捗に加えて、研究を進めていく中で生まれた新たな研究成果を出すことができたことを踏まえて、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度のうちに成人40名(ASD者とTD者含む)の脳波実験を実施し、学会発表と国際誌への投稿を進める。行動実験について、提示された文脈に応じた言語表現の適切性を判断させる談話理解実験だけは本研究課題採択前までに取得したデータがなかったため、令和5年度に実施した8名分のデータしかない。そこで、新たに成人TD者22名(合計30名)のデータを取得する。行動実験の成果についても学会発表と国際誌への投稿を進める。
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