研究課題/領域番号 |
23K18705
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 真生 名古屋大学, 人文学研究科, 助教 (50980348)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 薬草 / 森野旧薬園 / 伊吹山 / 医学 / 薬学 / 帝国 / 資源 / 動員 / 学知 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、帝国日本における薬草の資源化とその動員システムの形成に関する基礎的研究を行う。薬草は医療の質に直接関連する重要な資源であり、その生産・流通・供給・研究の在り方を検討することで日本の医療の歴史的展開を明らかにできる。さらに、そうした薬草をめぐる構造を明らかにすることは、「医薬品の欠乏」という問題が発生したアジア・太平洋戦争を医療史の観点から構造的に理解するうえでも有効である。 本研究は、上記の問題意識をもとに帝国日本における薬草をめぐる様々な取り組みを資源化という概念から捉え、その動員システムがいかに模索されたのかを検討する。薬草から医療、そして戦場の大量死を捉えなおすことを目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は、主に史料調査を中心に活動を行った。主要な調査先は、奈良県宇陀市森野旧薬園と岐阜県揖斐川町である。 前者では、大阪大学総合学術博物館の髙橋京子氏と近畿大学薬学部の高浦佳代子氏および資料所蔵者の森野てる子氏らの協力のもと、森野家所蔵の芳名帳の撮影と分析を行った。芳名帳は大正から戦後にかけて森野旧薬園に訪問した各界の著名人や専門家などが名前を連ねているものである。特に医学・薬学研究者たちが数多く訪れており、森野旧薬園が医薬学の世界でどのような立ち位置にあったのか、またなぜ数多くの医学・薬学研究者たちが訪問することになったのか、など近現代日本の薬草問題を考えるうえで興味深い課題を立案することができた。なお、研究成果の一部は、森野旧薬園春期展覧会にてキャプションと展示を通じて発表した。 後者では、薬種仲買商の個人史料と薬草販売の協同組合に関する史料を収集することができた。薬草の栽培や販売に関して、まとまった史料が残されていた事例は、今年度の調査ではほかに見出すことができなかったため、大変重要な成果であった。近現代を通じていかに薬草販売が展開していったのか、その実態を販路や販売量の編成を通じて分析することができると期待している。なお、このフィールドに関しては、滋賀県側の分析も行う必要がある。すでに史料所蔵先も把握しているため次年度に調査を行い、近現代日本における医薬学における伊吹山の位置づけを検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究の一年目は主に史料調査を行う予定であったが、次年度の具体的な分析に向けて十分な量の史料を確保することができた。このため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に関しては、森野旧薬園の芳名帳を中心に、医薬学研究者による伝統知の発掘と科学知との相克というテーマを研究の第一の柱として進めていきたい。薬草の資源化を実現するにあたって、在来社会に「伏在」していた伝統知の発掘は、当該期の研究者にとって重要な作業であった。この点についてはほとんど分析が及んでおらず、研究の意義があると考えられる。さらに、協力を仰いでいる薬学研究者の方々と森野旧薬園の学際的な研究に向けた議論も進めていきたい。 また、伊吹山に関しては滋賀県側の史料調査を行ったうえで、具体的な分析方策を検討することとする。筆者の調査の範囲において、伊吹山は近現代日本内地における有力な薬学研究のフィールドであった。その具体層を探るには、岐阜県側だけでなく滋賀県側からも分析を行うことで浮き彫りにできるはずである。
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