研究課題/領域番号 |
23K18708
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0103:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
禰宜田 佳男 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい教授 (00978653)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 鉄器化 / 見えざる鉄器 / 鍛冶炉 / 副葬 / 墳丘墓 / 青銅祭器 / 石器から鉄器 / 墳墓 / 畿内弥生後期社会 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、畿内地域における弥生時代の鉄器普及状況の分析、鉄器普及が進展した弥生後期から終末期の畿内における墳墓の特徴を抽出したうえで、弥生後期における畿内の政治権力形成状況に関する歴史的評価をおこない、前方後円墳出現にあたり畿内の果たした役割についての考察を行うものである。 初年度は文献調査を先行させ、現地調査については、次年度前半までにほぼ終了し、後半で研究成果を総括する。
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研究実績の概要 |
2023年度は長崎・福岡・新潟・埼玉などの資料調査を、購入したパソコン及びデジタルカメラを駆使して実施した。 検討課題の一つ目鉄器の普及過程については、近畿以東の弥生後期以降の集落出土の石器と鉄器の共伴状況を調べた。その結果、北陸や関東では畿内と同様に石製利器の出土がない遺跡で鉄器出土のない遺跡、あったとしても数点しか出土していない遺跡があることを確認した。あわせて近畿における鍛冶炉を検出した遺跡の集成も行ったが、弥生後期から終末期にかけて確認例が増える状況にはない。筆者が進めている発掘調査報告書から鍛冶を行っていた可能性のある遺跡を「再発掘」しても、終末期以降については同様の結果となった。鉄器化の進行に伴い鍛冶炉の検出例は増加すると予想していたが、それに反する状況にあることを確認した。 もう一つの課題、弥生後期以降の副葬の有無や大規模墳丘構築の有無と青銅祭器の有無についても集成作業を進めた。弥生前期から石製武器を副葬する北部九州では、後期も副葬は行われたが墳丘は発達せずに銅矛祭祀が行われた。一方、弥生後期以降の畿内でも副葬がまったくないわけではないが、基本的に副葬は行われず墳丘発達もせず、そのなかで銅鐸祭祀が行われたことを確認した。首長個人の突出を認めた北部九州と認めなかった畿内という違いがあったと考えているが、墳丘が発達しないという点では共通する。この両地域は青銅祭器を放棄したあと副葬が始まり墳丘が発達した吉備や出雲と対照的だったことになる。さらに近年、伊勢遺跡の出現や青銅器生産の活発化などで畿内以上に高く評価する意見もある近江は、畿内と同じであったことを確認した。 以上のように2023年度は、基礎的な資料集成をおこない、各検討項目についての大枠の方向性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査ができなかった地域やアルバイトによる資料集成作業で一部滞っている部分がないわけではないが、図書購入によって文献調査を充実させることができ、石器と鉄器の共伴状況の地域差、墳墓と青銅祭器に関する地域差などについての大枠については把握でき、次年度の作業方針が固まって来たと考えられるので、そのように評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の資料調査については、前年度に畿内をはじめとする近畿はまったくできなかったのでそれを実施しつつ、計画に挙げていた地域とくに中九州や中・四国などで実施する。 鉄器の普及過程の検討に関しては、西日本を中心に石器と鉄器の共伴関係の集成を進め全国的な視点で地域差等の有無について検討を行う。あわせて、これまで「石器から鉄器へ」という言葉が使用されてきたが、近年では青銅器時代の存在を提唱する考え方が出されていることを考慮に入れつつ、鉄器化が進展した根拠とされてきた石器の残存状況から鉄器の普及を述べることに関する方法的な有効性について、石器生産体制と鉄器生産体制との関係、青銅器の出土状況を踏まえながら整理する。さらに弥生時代の鉄器製作体制に関しては、古墳時代の鉄器生産とくに日常生活道具の生産にどのようにつながっていくのかという視点で検討する。こうした検討を踏まえて、「見えざる鉄器」について改めて今日的な視点から評価を行う。 墳墓と青銅祭器の関係については、副葬が盛んだったが墳丘の発達はなかった丹後・但馬について銅鐸が存続していた時期との関係を整理するとともに、畿内・近江及び北部九州をはじめ西日本各地域とのあり方と比較検討する。 以上の分析を踏まえて、「政治的に空白」に見える畿内における鉄器化の動向及び墳墓や青銅祭祀の特徴を整理し、その社会の特質を考察する。
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