研究課題/領域番号 |
23K18737
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0104:地理学、文化人類学、民俗学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉経済大学 |
研究代表者 |
豊田 紘子 千葉経済大学, 経済学部, 講師 (10979438)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 生食 / 青果物 / 農産物貿易 / 反グローバル / 植物防疫 / 検疫 / 着色 / 糖度 |
研究開始時の研究の概要 |
現代日本の果樹産業は生食用果実を中心とした生産・流通・消費構造という特徴をもつ。生食可能な農産物を広域に流通させることは困難をともなうが,20世紀初頭に日本産青果物はグローバル市場において流通していた。本研究は,現代果樹産業の基礎となった近代日本の園芸産地の形成と青果物輸出を主たる研究対象とし,野菜やそのほかの果物の動向と比較しながら,おもにミカンを事例とし,「果物=生で食べるもの」 という認識をはじめとする果物の「あるべき姿」はいかに生成・強化されたのかを明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
初年度である2023年度は資料や参考文献の収集に重点をおき検討を進めた。具体的には,植物防疫資料館で近代における植物防疫の各国の動向と,明治後期から大正期にかけて日本で発生した果樹の害虫に対する駆除予防試験および防除法の展開に関する資料を収集した。資料の検討の結果,19世紀末から20世紀初頭にかけて欧米各国およびオセアニア地域が植物検疫に関する法令を相次いで公布し,日本では1914年に輸出入植物取締法を制定することで対応したことが明らかになった。このことから近代における生植物・生果実のグローバルな移動が病害虫伝播防止を根拠に,国家による検査によって管理・制限されたことが見出された。 また日本国内において1880年代以降にフィロキセラやイセリアカイガラムシなど果樹の害虫が問題視されるなかで,取引される苗木に対して,あるいは果樹産地における防除として,青酸ガス燻蒸による徹底的な殺虫が遂行されたことが明らかになった。 カンキツ産地を事例に防除の展開について検討すると,防除に青酸やヒ酸鉛など毒性が高い薬剤が使用されていたことが確かめられた。また,これらの薬剤の使用はカンキツ果実の着色促成や糖度上昇効果があることが生産者や農学者によって見出され, 1930年代から1960年代にかけてカンキツ樹の青酸ガス燻蒸が積極的に実施されたことが明らかになった。このことから当該時期には,虫の痕跡がなく均一に色濃く着色され,砂糖をかけずとも甘い果物であることがミカンの「あるべき姿」となりつつあったことが見出された。 また生果との比較として果物加工品の輸出について検討した。具体的には,戦間期における果物缶詰貿易について,国内の缶詰工場の調査票とイギリス国立公文書館で得られた果物缶詰の輸入統計等の資料から予察を行った。その結果としてイギリスが輸入する日本の果物缶詰はほとんどがミカンであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は予定通り,植物防疫資料館所蔵資料による検疫や防除に関する検討と,イギリス国立公文書館における戦間期の果物缶詰貿易に関する資料収集を実施することができた。2023年度に収集した資料により,次年度の研究成果の発表にむけた準備を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,カンキツ産地でみられた果実の規格化(出荷規格の設定など)や外観調整(着色促成など)の動向に関して学会で発表し,研究成果をまとめる。 また輸出入植物の検査がとくに厳格であったアメリカへの日本産ミカン輸出を事例に,輸出に適した(輸出検疫条件を満たす)ミカンがいかに生産されたかを調査する。その際に,果実そのものだけでなく梱包資材や貼付されたラベルなども商品の外観ととらえ,果物の「あるべき姿」の検討の対象にしようと考えている。
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