研究課題/領域番号 |
23K18745
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0105:法学およびその関連分野
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 有希 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 助教(特定雇用) (70908053)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 協議・合意制度 / 司法取引 / 捜査・公判協力型取引 / 捜査・公判協力制度 / 手続保障 / 捜査・公判協力 / procedural safeguards |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、捜査・公判協力制度、つまり協力者にインセンティブを与えて協力を誘引する制度一般について、その弊害を防止するために最低限必要な手続的保護策を検討する。具体的には、アメリカ合衆国の各種制度を素材に比較法分析を行い、①捜査・公判協力制度で生じる弊害の共通点、および②これに対抗するために要請される手続的保障の内容を明らかにすることを狙いとする。
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研究実績の概要 |
本研究は、捜査・公判協力型取引や訴追延期合意、刑事免責など、情報を持っていると考えられる者に金銭的ないし刑罰的インセンティブを与えて情報を得る制度が虚偽の情報提供などの弊害を防止するためにいかなる手続的方策を備えているのか(あるいはいないのか)を検討するものであり、具体的には、捜査・公判協力制度の発達が著しいアメリカを素材に比較法分析を行う。 2023年度は、主としてアメリカの①内部通報者報奨金制度と②刑事免責を素材に、(1)制度を活用した場合の弊害、(2)その対抗策として制度上盛り込まれている手続的方策について検討を行った。(1)については①、②ともに虚偽の情報提供が問題になるとされている。また、①では過剰通報が問題視されており、さらにこのほか、情報提供者の証拠収集過程が不透明であるとの指摘も見られる。(2)について、①は情報提供者の保護や賞金を得る資格の制限があり、②は捜査・公判協力型取引と同様に、証拠開示、反対尋問権の保障、陪審説示を経ることが重視されていることが分かった。これ以外にどのような手続保障が取られているか、また必要と考えられているか、現在も調査中である。 以上のほか日本方への示唆を考えるための前提として、日本法ではどのような手続をとりうるのかを考えるために、協議・合意制度に関する裁判例を素材として、信用性の評価方法について検討を加えた。その結果、信用性評価を厳格にすることによって虚偽供述防止を図ることには限界があり、その成果を論文にまとめ、公表した。付随的に、信用性を裏側から担保する控訴審の審理のあり方についても分析し、2024年度にいくつかの論文が公表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2023年度は、さまざまの捜査・公判協力制度について比較法研究を行い、(1)捜査・公判協力制度を活用した場合の弊害、(2)その対抗策として制度上盛り込まれている手続的方策について特に制定法の観点から検討を行うこととなっていた。内部通報者報奨金制度と刑事免責に関する資料の調査はおおむね進んでいる。また、2024年度に計画していた日本法への示唆について、2023年度に一部前倒しして行うことなったため、一定の成果は得られた。他方、これらの制度が当初想定していたよりも複雑であり、分析に時間を要しているため、計画にもやや遅れが見られる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、引き続きアメリカにおける内部通報者報奨金制度と刑事免責についての調査を継続し、これらの制度の問題点とその対応策について裁判例等を活用しながらさらに細かな調査を行う。それが終わり次第、訴追延期合意等の調査に進み、同じように制度の弊害と手続保障の内容について分析を行う。その後、2023年度の研究成果を踏まえながら、捜査・公判協力制度に共通して見られる弊害の特徴と手続保障を抽出し、日本法にも同じく当てはまる議論といえるかを明らかにする。
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