本研究では、夫婦間の相互関係による意思決定を組み入れた個人のライフサイクルについて、マクロ経済学の動学的確率的一般均衡モデルを用いてシミュレーション分析を行う。そのうえで、 (1) 所得税制改正が賃金や税収だけでなく、夫婦の財・時間の資源配分とそれによる結婚後の相互の利得、ひいては個人の婚姻状態の選択などのライフサイクル・イベントにも影響を与える状況下で、社会厚生を最大化する所得税の望ましい累進度を明らかにする。また、(2) 新たな税制がもたらす世代・個人・性別・世帯間で異なる便益と、政策変更による労働供給や婚姻パターンの変化も定量的に示す。
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