研究課題/領域番号 |
23K18789
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
地主 遼史 成蹊大学, 経済学部, 助教 (50980455)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ゲーム理論 / 価格理論 / サーチ理論 |
研究開始時の研究の概要 |
現在各国の法定通貨は硬貨や紙幣で発行されており、支払いに使用可能な固有の最小単位を持つ。各国の中央銀行が検討しているデジタル通貨はより広範な最小単位選択を許すため、通貨の最小単位は政策手段として検討に値する。本研究では価格集合の役割が顕著な状況に集中し、様々な価格集合を仮定した場合の帰結(均衡)を分析することで、通貨の最小単位が均衡における資源配分の効率と価格の安定性に与える影響をゲーム理論を用いて分析する。例えば、日本円の最小単位が1円でいいのか、この単位を変化させた場合にどのような影響があるのか、そのような疑問に対して、新しい理論的な示唆の獲得を目指す。
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研究実績の概要 |
研究は順調に進んでいるが、当初の計画と異なり、2つの研究手法に関して興味深い発見があったため、その整理と開発に時間を費やしている。以下にそれぞれに関する重要な進展を説明する。 1. 動的な政策の分析枠組みの1つである、進化的遂行について、一定の条件において、介入回数がせいぜいプレイヤーのタイプの数+1回で効率的な均衡への収束を保証できることを発見した。また本研究で提案している試行錯誤による政策立案者の外部性学習が、1970年代に提案されたCharges and Standards Approachの一種であり、その懸念されていた弱点(収束が保証されないなど)を克服した特殊例であることが明らかになった。当時と比較して、現在のゲーム理論は動的な政策を分析する道具が発達しており、その利点が活きた。 2. 動的な政策の分析に重要な解概念である完全均衡の、非可算無限選択肢集合を持つゲームへの拡張に関して、自然手番の非可算無限な選択肢集合が問題になることが明らかになった。完全均衡の元々の定義には、(有限選択肢集合が議論されていたため、)自然手番に関する記述が無い。しかし、自然手番が非可算無限選択肢集合を持つ場合、(各プレイヤーの戦略に関わらず)発生確率が0の情報集合が珍しくなく、プレイヤーがその情報集合を考慮しないことが起きうる。完全均衡が各プレイヤーに求める合理性を全ての状況への注意深さとすると、非可算無限選択肢集合に拡張した場合も同様の注意深さを求めることが自然かもしれない。 これらの進展は通貨の最小単位を議論する上で便利であり、研究開始当初より大幅に方法論の観点で充実した。他方で通貨への応用に関して、文献調査を進めるに留まっており、今後は開発した手法の応用を円滑に進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記述したように、分かりやすい発見があったため、また研究発表や雑誌への論文投稿など、アウトプットが伴っているため、順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
元々の研究計画に従い、開発した研究手法を活用し、通貨の最小単位が市場競争、特に方向付きサーチ理論が扱う消費者間の協調の失敗がある状況、に与える影響を明らかにする。
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