研究課題/領域番号 |
23K18790
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
相澤 大輝 中央大学, 理工学部, 助教 (10980138)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 空間経済学 / リモートワーク / 集積の経済 / 分岐理論 / 経済地理学 / 厚生経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
Covid-19 の世界的流行以降,企業と政策当局は,労働者が地方に居住しながら働くという選択を推進しやすくなった.しかし,このような地方移住の促進はその地方の外側に位置する地域内の労働者数を減少させるため,集積の経済を減少させる.多数の地域を一つの経済とみなした場合,当施策・政策を社会厚生の観点から推進すべきと断言できない.本研究課題では,産業の空間分布を変化させる企業施策・地域産業政策のうち,厚生の観点から望ましい施策・政策を解明することで,推進の是非を検討する.研究目的を達成するために,多産業の新経済地理学モデルを構築し,特定の産業・都市に属する企業への所得支援政策を厚生分析する.
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研究実績の概要 |
本研究目的は,産業の空間分布に影響する企業施策や地域産業政策のうち,厚生の観点から望ましい施策・政策を明らかにすることである.この目的を達成するために,多産業の新経済地理学(NEG)モデルを構築し,モデルを用いて経済均衡の分析と厚生分析を行うことが本研究の主要計画である. 2023年度は,労働者のリモートワークを表現する2産業のNEGモデルを構築し,均衡分析と,均衡の厚生分析を数値的に行った.分析結果として,リモートワークが普及すると,普及される前の均衡が不安定化し,別の均衡へと動的にシフトすることを示唆する結果が得られた.より具体的には,移動可能な労働者が大都市に一極集中する均衡は,リモートワークが普及した際,労働者の一部が地方へと移動している安定均衡(均衡A)と,企業の生産拠点のみが地方へと移動している安定均衡(均衡B)へが均衡として生じる結果が得られた.さらに,労働者の効用を分析した結果,リモートワーク普及前の均衡と比較して,均衡Aでは労働者の効用は上昇するものの,均衡Bでは効用が低下する結果が得られた. 本研究成果は,リモートワークが普及した際に都市人口の空間分布がどのように変化するかと,その空間分布が変化した結果として労働者の効用水準がどのように変化するかの議論に資する成果である.特に,生産拠点のみが変化する場合,労働者の効用水準が低下する可能性がある.したがって本研究の分析結果は,政策当局は,労働者の効用水準悪化を防ぐための政策の検討が必要であることを示唆する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要に示したとおり,2023年度では主に経済均衡の分析と均衡の厚生分析を実行した.経済均衡の分析にあたって,2産業から構成される経済において,移動可能な労働者の一極集中からどのような均衡が生じうるかについて,分岐理論を援用することで解析的に調べている.均衡分析の観点からは研究は順調に進展しているものの,政策の厚生分析はまだ実施していないため,今後は産業政策による労働者の移動がどのように全体の厚生水準に影響するかを調べる必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,移動不可能な労働者も含め,全体的な厚生水準が均衡のシフトにともなってどのように変化するかを明らかにする.これを達成するために,社会厚生の変化をハーバーガー便益計測式に基づいて,企業の独占的競争に起因した価格の歪みとバラエティの歪みの観点から厚生水準の変化のメカニズムを明らかにする. さらに,労働者移転型の産業政策がどのように厚生水準に影響するかを定量的に分析する.これを達成するために,本NEGモデルを空間定量モデルへと拡張する.日本の統計データを用いてモデルのパラメータをキャリブレーションし,労働者移転型の産業政策の厚生分析を実行する.これにより,例えば大都市を優遇した政策を実施するべきか,地方を優遇した政策を実施するべきかを厚生の観点から明らかにする.
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